高岡滋医師による論文「環境汚染による健康影響評価の検討 -水俣病の拡大相似形としての原発事故」(岩波書店『科学』2012年5月号)が、水俣協立病院ホームページからダウンロード可能です。
東日本大震災による福島第一原発事故と水俣病はよく比較される。実態の解明、原因の排除、住民への情報提供、健康障害の解明と治療、被害者への補償、再発防止など、水俣病でどれ一つとしてまともに実行されなかった「本来あるべき公衆衛生学的対策」が、果たしてきちんとなされていくのか、ということが私の最大の関心事であった。原発事故は深刻で規模も大きいゆえ、ある程度の対策はなされるだろうと最初に想像したが, それが間違いとわかるのに長くはかからなかった。
しかし、それと同じくらいショックであったのは、長年メチル水銀の健康影響(リスク)を考察してきた目から眺めると、放射線医学専門家の多く、そして放射線物理学者のほとんどが、公衆衛生学が営々と築いてきたリスクと因果関係解明の歴史と手法を理解せずに、放射線のリスクを語っていた(いる )ことである 。以下 、メチル水銀中毒と比較しながら、述べてみたい。