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日本の裁判所はなぜ原発事故を防げなかったのか via Book ウォッチ

(抜粋) 重い口開いた裁判官  日本の裁判官は自分がかかわった裁判について語ることは極めてまれだが、二人の朝日新聞社記者が、原発訴訟にかかわった裁判官に粘り強く働きかけ、10数人の裁判官から話を聞き、原発訴訟の難しさ、特殊性を聞き出してまとめたのが本書『原発に挑んだ裁判官』(朝日新聞出版)である。 原子力発電所は、日本の原子力研究者、技術者が総力を挙げて作っている高度な科学技術の巨大システムである。いかに優秀な裁判官といえども、そうした代物の中に、国民の安全性を損なう欠陥を見つけ、正すことは至難の業である。最高裁では、こうした国策も絡む訴訟を、「複雑困難訴訟」とよんでいるのだという。 地方裁判所の裁判官の中には、敢然とこの難問に取り組んだ裁判官たちがいた。たとえば、2006年に北陸電力志賀原発2号機の運転差し止め訴訟では、「電力会社が想定しているM6.5の直下型地震では、耐震性が十分ではない」として、井戸謙一裁判長は、運転差し止めを求めた住民側勝訴の判決を言い渡した。しかし、この裁判は、高裁で住民側逆転敗訴、2010年秋に最高裁でも住民敗訴となった。東日本大震災で福島原発が津波に襲われて事故を起こしたのはその4か月余り後の事だった。福島原発では、津波の前に地震そのものによって原発が壊れたという指摘も出されており、1審判決の先見性に驚かざるを得ない。 国策を忖度する最高裁事務総局 しかし、こうした数少ない判決は、高裁、最高裁でことごとく覆されている。その背景には、日本の裁判制度に巣くうゆがんだ官僚性があると本書は指摘している。 たとえば、本来は最高裁の事務事項を処理する庶務部のような組織だったはずの最高裁事務総局が、エリート裁判官の出世コースになっており、全国の裁判官の人事、予算、報酬などを牛耳っているのだという。 それどころか、そこからは、原発訴訟のような国策に絡む裁判では「行政庁のした判断に合理性、相当性があると言えるかどうかという観点から審査していけば足りるというべきであるように思われる……」などと、裁判官の判断を誘導するような見解を出している。この「見解」は、日本の原発訴訟に対する判断基準とみなされている伊方原発1号機に対する最高裁判決の論理を先取りした形になっている。 また、最高裁には判事を補佐する調査官という人たちがいる。彼らは高裁から上がってきた裁判について、過去の例に従って「上告棄却」「不受理」などの判断を下すのだが、最高裁判事が知らないうちに扱いが決まっていることもしばしばあるという。調査官は裁判官のエリートコースの一つで、最高裁事務総局などの経験者も多く、「過去の判例踏襲型の発想が強く、司法の硬直化の原因にもなっている」という研究者からの指摘もあるという。 日本では、三つの権力の中で司法権の弱さが目立つ。その元凶は、時の権力や国が進める国策を忖度しすぎる最高裁のエリートたちなのかもしれない。 全文は日本の裁判所はなぜ原発事故を防げなかったのか

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焦点:福島事故経て原発訴訟に変化の予兆、司法現場には重い課題 via ロイター

[東京 19日 ロイター] – 新しい規制基準の下、初の原子力発電所の再稼働については、年内には実現するとの見方が支配的だ。しかし、国の審査に合格しても、裁判所が地元住民による 稼働差し止めの仮処分請求を認めた場合、当分の間は原子炉を動かすことができなくなる。 (略) 注目されるのは、今春に予想される九州電力(9508.T: 株価, ニュース, レポート)川内1・2号(鹿児島県)と関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)高浜3・4号(福井県)の計4基に対する仮処分の可否だ。福島事故が発生する前は、司法判断が住民側の訴えをほとんど退けてきた。 いずれの原発も、2013年7月に始まった原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に合格しており、年内再稼働が既定路線と報じるメディアも少なくない。しかし、いま、推進側の一部から楽観論を戒める声が出始めている。 電力業界に詳しいある関係者は、ロイターの取材に応じ、「高浜3・4号再稼働差し止め仮処分申請で、関電が負ける可 能性は相当にある」と予想するとともに、「川内原発1・2号差し止め仮処分決定の確率は五分五分。負けた場合、九電はふたけた%台の再値上げ申請に踏み切 るだろう」との見通しを明らかにした。 <意気込む反対派、訴訟は有利との読み> 川内1・2号に関しては昨年5月鹿児島地裁に、高浜3・4号については昨年12月福井地裁に、それぞれ地元住民らが 再稼働差し止めを求める仮処分を申し立てた。原発稼働差し止めのような重要訴訟の審理は合議で行うが、福井地裁の仮処分を担当する裁判長は、昨年5月、大 飯原発運転差し止めの判決を出した樋口英明氏が務めている。 仮処分でいったん差し止め決定が出ると直ちに効力が発生するため、再稼働はできなくなる。仮処分は高裁判断で確定す るが、確定した判断を電力会社側が覆すには、本訴訟に持ち込んで逆転判決を勝ちとるしか方法はない。仮にそれができたとしても、再稼働がさらに遅れるとい う事態が待ち受けている。 (略) <原発訴訟、最高裁が誘導した過去> 元裁判官の瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授は、住民側が負け続けてきた過去の原発訴訟の背景に、最高裁の誘導が あったと指摘する。今年1月に出版した著書『ニッポンの裁判』(講談社現代新書)で、瀬木教授は「最高裁判所事務総局は、原発訴訟について、きわめて露骨 な却下、棄却誘導工作を行っていた」と批判する。 同書によると、誘導の舞台となったのが、原発商業利用の初期だった1976年10月と、本格的な拡大期だった 1988年10月にそれぞれ行われた裁判官協議会だ。ここでの協議会とは、最高裁で行われた裁判官による内部議論のこと。最高裁に請求して得た関連資料か らは、瀬木氏の指摘通りの議論があったことが読み取れる。 88年10月の協議会では、高度な専門知識が求められる原発訴訟における司法の役割について、「行政庁の判断を、裁判所として一応尊重して審査に当たる態度をとるべき」との意見が記載されている。 瀬木氏はロイターの取材に対し「一般に日本の裁判所は、行政や立法に関するきちんとしたチェックをしていない。非常に及び腰であることは間違いない」と述べた。 一方、最高裁関係者は「最高裁事務総局が現場の裁判に対してどちらに持っていくべきだと考えていることは一切ない」とロイターに説明した。 全文は焦点:福島事故経て原発訴訟に変化の予兆、司法現場には重い課題

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