運転開始から40年を超えた関西電力の3基の原子力発電所について福井県の杉本知事は28日、運転の延長に同意する考えを表明しました。関西電力は準備が整った原発から再稼働させる考えで、福島第一原発の事故のあと40年を超えた原発の再稼働は全国で初めてとなります。
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杉本知事は当初、議論を進める条件として原発にたまり続ける使用済み核燃料を県外に運び出す「中間貯蔵施設」の候補地の提示を関西電力に求めていましたが、選定は難航していて、候補地の確定は2023年末に先延ばしとなっています。
40年を超える原発をめぐっては、国は最大25億円を自治体に交付する新しい交付金制度を検討するなど活用を後押しする方針です。
長期運転の原発 収益性あがる場合は利用も
運転開始から年数がたった原発については、安全対策にコストがかかりますが、電力会社は長期に発電をすることで収益性があがる場合には利用を選択するケースがあります。
現在、原子力規制委員会の40年を超える運転の審査に申請し、合格した原発は、28日に福井県知事が再稼働に同意した関西電力の高浜原発1号機と2号機、美浜原発3号機のほか、茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発の合わせて4基があります。
東海第二原発は、地震や津波に備えた対策工事が続いているほか、地元の同意が得られておらず、再稼働のめどはたっていません。
このほか、昭和59年(1984年)に運転を開始した鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機や、昭和60年(1985年)に運転を開始した福井県にある関西電力の高浜原発3号機を含め、現時点で運転を開始してから30年を超えている原発は合わせて11基あります。
この11基についても、電力各社は今後、40年を超える運転延長の審査を申請するのか廃炉を選ぶのか評価して決めることになります。
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原発事故の前の2011年1月に、福井県にある日本原子力発電の敦賀原発1号機が40年を超えて、40年と10か月運転をしたケースがあります。
原子力関連の企業で作る団体、日本原子力産業協会によりますと、原発をできるだけ長く運転しようという試みは海外で先行して行われていて、たとえばアメリカでは経年劣化の対策などを前提に、最長80年まで運転を認めています。
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美浜町長「地域の事情くんだ意義ある判断」
原発が立地する美浜町の戸嶋秀樹町長は「半世紀にわたり国策に協力してきた地域の事情をくんだ意義のある判断だ。美浜原発3号機は、ほぼ10年停止しているので監視体制をしっかりと設けて安全に稼働してもらいたい」と述べたうえで「原子力全体の必要性を含めて、国民の理解が十分に浸透していない。立地としても努力は続けているが、国が前面に立って原発の必要性と安全性について国民全体の理解を促進する取り組みをしっかりと進めてほしい」と話しました。
高浜町長「安全第一に運転を」
運転開始から40年を超える関西電力 高浜原子力発電所1号機と2号機の再稼働に福井県の杉本知事が同意したことを受けて、原発が立地する高浜町の野瀬豊町長は「町の再稼働同意の判断から間があいたが安どしている。福島の原発事故のあと10年近く停止していた原発を動かすことになり、まずは安全第一に運転をしてもらいたい」と述べました。
高浜町の住民 “町には必要だが不安も”
原発が立地する高浜町の住民からは町の経済にとって再稼働は必要だとする声や古い原発を稼働させることへの不安の声などが聞かれました。
このうち60代の男性は「原発は町の経済にとって必要な生活の糧なので再稼働には賛成です」と話していました。
一方、70代の女性は「諦めていますが本心は反対です。古いものを稼働するのは、いつどこでどうなるか、わからないと思います」と話していました。
また、別の60代の男性は「地球温暖化対策のためにも原発の再稼働はしないといけないと思いますが、起動する際にはトラブルがないようにしてほしいです」と話していました。
また、別の70代の女性は「電気はないといけないとは思いますが、福島第一原発の事故があったので怖いです」と話していました。
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自民 下村政調会長「安全最優先にしっかり対応を」
自民党の下村政務調査会長は、記者会見で「地元の理解が得られたことは大変重要だ。関西電力には、安全確保を最優先にしっかり対応してもらいたい」と述べました。
また、菅総理大臣が表明した温室効果ガスの削減目標について、下村氏は「原発依存度を減らしながら46%削減するのは大変難しいことだ。原子力の位置づけを含むエネルギーの在り方について、党でも集中的に議論し、結論を出したい」と述べました。
公明 竹内政調会長「政府は国民理解に丁寧に対応を」
公明党の竹内政務調査会長は、記者会見で「原子力規制委員会が策定した厳しい基準をクリアしたうえで、立地自治体の関係者が同意したと判断している。政府には、引き続き国民の理解を得られるよう、丁寧に対応してもらいたい」と述べました。
共産 穀田国対委員長「平然と同意に憤り感じる」
共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「原発事故から10年という節目に、まるで事故がなかったかのように平然と運転延長に同意することに対し憤りを感じる。この間の電力会社のさまざまな不祥事や司法の判断、国民の世論を無視した暴挙としか言いようがない」と述べました。