原発政策が主要な争点に浮上した東京都知事選が23日告示される。22日には出馬会見に臨んだ細川護熙元首相が「脱原発は東京にとって最優先の課題」と主 張。その行方には投票権を持たない県民からも熱い視線が注がれる。首都から原発の是非を問う意義はどこにあるのか。県内の市民団体、福島からの避難者らに 聞いた。
これほど「脱原発」のフレーズが広く飛び交う選挙が過去にあっただろうか。30年近く原発問題に取り組む「プルトニウムフリーコミニケーション神奈川」の水澤靖子さん(61)=横浜市神奈川区=は関心の高まりを歓迎する一人だ。
「最も純粋に脱原発を考えている政党、候補者を応援してきた」。だが、福島第1原発事故後の2度の国政選挙で脱原発を掲げた候補は相次いで落選。「例え ば、みどりの風や緑の党。結局、純粋なだけでは負けてしまう」。政権交代と経済再生を前面に大勝した自民党を目の当たりにし、原発政策を問い直す難しさを 痛感した。
細川氏のほかに脱原発派の候補には前日弁連会長の宇都宮健児氏もいる。「それぞれ支持層が異なる。選挙を通じ脱原発支持層の幅が広がれば」と話す。
県内の脱原発グループが集う「さよなら原発・神奈川」で活動する女性(69)も、過去2度の国政選挙で苦い思いを味わった。原発ゼロを願う有権者の票が割 れる懸念から、候補者の一本化を求めて政党に働き掛けたがかなわなかった。結果的に死票となって民意が埋もれてしまったと感じてきた。
今回もその懸念があるが、「福祉や防災は誰が知事でも取り組むテーマ。脱原発はやり切る力を持った人じゃないと、絶対にできない」。今回、発信力のある小泉純一郎元首相と組んだ細川氏の出馬で潮目が変わり得る好機と捉える。
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ただ、細川氏は出馬会見で集団的自衛権の行使容認や靖国神社参拝に反対の姿勢を明確にした。「いまの安倍政権の路線に歯止めをかけるストッパーになるかもしれない」
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大消費地である東京に電力を供給してきた福島からは冷静な声も上がる。
福島県南相馬市の菊地秀典さん(31)は「都知事選に興味はない。今の福島は、はっきり言ってそんな状況ではない」という。
福島第1原発で仕事をしているとき、東日本大震災が起きた。その後、県外などにも避難したが収入の問題などもあり、妻と2人の子どもを埼玉県に残し、南相馬市に戻った。1年ほど前から福島第2原発で働いている。
都知事選に関心がない理由は「誰がなっても福島にはメリットがない」と考えるからだ。「原発ゼロ」を看板にする候補者にも「被災地の人は原発ゼロより も、被災前の状態に戻してほしいというのが実情。自分としては、何でゼロにするのか、何のためにするのかを語ってほしい。被災地のためなのか、注目された いためなのか」。
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同じ南相馬市出身で、横浜市旭区で避難生活を送る村田弘さん(71)は「現政権の原発回帰路線が露骨になる中、都知事選で正面から原発を争点にすることは大歓迎だ」と話す。
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「原発が当選の道具に使われるだけで終わる『愚』だけは、絶対に避けてほしい」。選挙が終わった後も原発の問題と向き合い続けなければならない避難者としての願いだ。
全文は都知事選:「脱原発」問う意義は、市民団体や避難者に聞く
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(抜粋)“陰の選対委員長”とも言われる菅義偉官房長官は、会見で知事選について問われるたびに「選挙については(石破)幹事長に聞いてほしい」と繰り返してきた。ところが16日には、小泉進次郎復興政務官(32)について「できれば応援してほしい」と一歩踏み込んだのだ。
進次郎氏は、「党を除名された方を支援することも、支援を受けることもよくわからない。応援する大義はない」(15日)、「日本の中で最大の電力消費地の トップが、原発に関してどういう考えを持っているのか、私は関心がある」(16日)と、「反舛添」の姿勢を明らかにしてきた。
舛添氏支援についてなお違和感を覚えている議員たちから「筋論だ」と支持する声があるが、17日に進次郎氏は「都知事選についてはコメントしない。復興政務官としての仕事にまい進する」と発言を封印した。
進次郎氏の口を閉ざした後は、父・純一郎氏だ。自民党総裁でもあっただけに遠慮がちに口にする議員が多かったが、同氏に近い閣僚の一人は、「小泉さんの言動はさすがに看過できないレベルまで来た。出てきたらつぶすだけだ」と明言。
そして小泉チルドレンの衆院議員の一人も“小泉離れ”を宣言した。