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A nuclear power plant in Byron, Illinois. Taken by photographer Joseph Pobereskin (http://pobereskin.com). カレンダー
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- Grom Montenegro on Duke Energy’s shell game via Beyond Nuclear International
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Tag Archives: 金原ひとみ
放射脳といわれる人の心の中は? 芥川賞作家が原発事故の自主避難体験を小説に via LITERA
福島第一原発の事故は、多くの人生を狂わせた。放射能汚染によって避難区域に指定された人たちだけではなく、汚染が深刻であるにもかかわらず区域外であるために、保障も受けられないまま自主避難している人々も数多い。さらには、避難先で孤立したり、避難した人と避難しない人のあいだに軋轢が生まれるなど、問題は深刻さを増している。 だが、こうした避難をめぐる問題は福島県だけではなく、放射能汚染が心配される、あらゆる地域で起こっている。そして、ここでも自主避難を決めた人たちは「無闇に怖がるだけの放射脳だ」「被災地に住んでるわけでもないのに被災者ぶっている」などと中傷されることも多い。 そんななか、自主避難者にスポットを当てた作品が発表された。著者は、『蛇にピアス』(集英社)で芥川賞を最年少受賞した金原ひとみだ。 その作品は、「すばる」(集英社)1月号に掲載された長編小説「持たざる者」。金原自身、震災発生時は妊娠中で、1号機が水素爆発を起こしたすぐ後に娘を連れて東京から岡山県に避難。岡山で出産した後はフランスに移住している。「持たざる者」は、そんな彼女の経験が反映された作品である。 物語は、デザイナーの修人と、その友人・千鶴、千鶴の妹・エリナ、エリナの知人・朱里と、4人の語り部によって綴られていく。まず最初に登場する修人は、久々に再会した千鶴に、原発事故後、いかに自分の生活が変容していったかを語り出す。 (略) 修人の必死の説得に、「行くよ!」「子供を守らないひどい母親だと思われたくないから!」と泣きながら絶叫する香奈。しかし、そのタイミングで都庁に勤める香奈の父親から電話があり、通話を終えた香奈は「原発の事は国の発表してる通りで、東京から逃げる必要はないって」と修人に伝える。ヒステリックな香奈の態度に辟易としていた修人は、一旦は〈もう止めよう。無駄に香奈を不安がらせるのは止めよう。大丈夫。被曝なんかしない〉と言い聞かせるが、その後も放射能への不安は増幅。他方、修人と比例するように、香奈はどんどん楽観的になっていく。 〈(香奈は)全く原発の事を気にしなくなっていた。立て続けに原子炉が爆発しても、大変だね避難区域に設定された地域の人は、と全く他人事な態度でニュースを流し見ていた〉 もちろん、東京の浄水場の水から放射性ヨウ素が検出されても、ほうれん草や牛乳から放射性物質が検出されても、香奈の態度は変わらない。食べるものから散歩まですべてに神経質になっていく修人に対し、香奈は独自に集めた安全であると主張する情報を示すが、それも修人には〈放射能の影響で死んだと断定する根拠が明確になっていない以上、過剰に気にしてしまうのは当然の事じゃないだろうか〉と考える。──このふたりのやりとりは、現在、社会のなかで繰り広げられている議論と同じだ。危険だと言う者と、安全だと言う者。どれだけ言葉を尽くしても、両者のあいだは埋まるどころか隔絶して、分裂状態だ。いや、安全を訴える人だけではない。“そもそも自分とは関係ない”と無関心である人たちもまた、事故後の影響を危険視する人々を孤立に追いやっているのが現状だ。 (略) 結局、修人と香奈が選んだのは、離婚という選択肢だった。そして修人は、京都に高級マンションを購入し、香奈と娘はそこに住むことを離婚の条件にした。だが、この話を聞いていた友人の千鶴は、修人にこう語る。 「何か、自分勝手だよね。危ないから逃げろって言って、能動的なように見えて、修人くんは全然能動的じゃない。自分は何にもしてない。ただパソコンの前に座って調べものして指示を出すだけ。誰もそんな人の言う事聞こうなんて思わないよ」 娘を放射能の危険から逃がしてやりたい。その一心だったとしても、それならなぜ、妻と娘と一緒に西へ向かわなかったのか。仕事を理由に自分は東京に残ると最初から決めていた修人の自己欺瞞を、千鶴は突く。たぶん、事故後、この修人と同じ迷いのなかにいた人は多いはずだ。結果として家族で避難した人、妻と子どもだけ逃がした人、修人と香奈のように避難を諦めた人……。ただ、あのときもいまも社会に充満しているのは、千鶴の言う「何の被害も被っていない東京在住者が逃げる必要があったのかって、思わなくはないってこと」という言葉ではないだろうか。実際、東京にも放射能の被害がおよんだにもかかわらず、だ。 (略) さらに自主避難をめぐる孤立は、海外でも起こる。千鶴の妹で事故後すぐにイギリスへ渡ったエリナは、イギリスでの避難生活をこう述べる。 〈とりあえず逃げておいて損はないだろう。そういう、普通の感覚で避難したにも拘わらず、事故から二年経った今、私は駐在の人たちに変人扱いされ、イギリス人にも奇異な目で見られ、時々年配の人には家族は一緒にいるべきよと諭されたりもする。放射能について話せば話すほど人に引かれ、引かれている内に段々私も放射能について話せなくなり、話せなくなるのに比例して考えなくなっていった〉 〈それぞれの家庭に、それぞれの原発事故がある。それぞれの家庭に、放射能被害がある〉──小説は原発事故や自主避難者だけをクローズアップしたものではないが、それでもいま、自主避難者に向けられる視線がどんなものであるかを考えさせられる作品であることはたしかだ。 全文を読む。