広島や長崎の市民団体など22の団体と個人44人は7日、日本の8政党の代表者に宛てて、米バイデン政権が検討しているとされる核の先制不使用宣言に反対しないよう求める公開書簡を送った。
バイデン政権は来年策定する「核態勢の見直し(NPR)」で、「米国は先には核兵器を使わない」「米国の核兵器の唯一の目的は、核攻撃を抑止し、必要とあれば報復すること」とする宣言を検討中と報じられている。公開書簡は「日本の反対のためにこの宣言が断念されることになれば、国民の多くは驚き、怒るだろう」としている。
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核の先制不使用宣言をめぐっては、バイデン政権発足後の今年4月に加藤勝信官房長官や茂木敏充外相が反対の立場を示したことを受けて、長崎原爆の日の8月9日、米国科学者連盟やウィリアム・ペリー元国防長官ら米国の26の団体・個人が、懸念を示す公開書簡を日本の各政党の代表者に送った。「核攻撃を受けた唯一の国で核廃絶を唱えてきた日本が、この小さくても重要な一歩を阻止することになれば悲劇的だ」と指摘しており、今回の日本側の公開書簡はこれに呼応した。
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米国の「核の傘」に頼る日本政府は、米国の核抑止力が低下する恐れがあると警戒。茂木外相は4月の衆院外務委員会で「すべての核保有国が検証可能な形で同時に行わなければ機能しない」などとして宣言に反対する考えを示した。市民団体側は「こうした日本の姿勢が、米国で日本の核武装の可能性を示す証拠と解釈されたり、宣言に反対する保守勢力によって意図的に利用されたりすることになる」と懸念している。(編集委員・副島英樹)