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「国の責任論に決着」福島原発訴訟・仙台高裁判決の意義 原告弁護団の馬奈木厳太郎弁護士に聞くvia 東京新聞

 東京電力福島第一原発事故から9年半、事故収束作業とは別に続くのが、被災者らによる事故の責任追及だ。原子力政策を推進してきた国に責任はあるのか-。集団訴訟の判決で仙台高裁は9月30日、「東電を規制する立場の役割を果たさなかった」と指弾し、国は東電と同等の賠償義務があると判断した。「責任論に決着をつけた」と評価する原告弁護団事務局長の馬奈木厳太郎(いずたろう)弁護士(45)に、判決の意義と被災者救済のあり方を聞いた。(小川慎一) -判決をどう評価する。原発事故の国の責任を巡っては、集団訴訟の地裁判決で判断が割れてきた。今回は勝ち星が一つ増えたというレベルではなく、国の責任論に決着をつけるものだ。他の判決や東電旧経営陣3人の刑事裁判(1審東京地裁は無罪、検察官役の指定弁護士が控訴)も意識し、国の責任を否定する論拠を丁寧に批判した。-どう決着をつけたか。責任が認められるかは、①危険を事前に予測できたか②予測できたとして対策を講じれば結果を回避できる可能性があったか-という二つのポイントがある。 ◇「長期評価」の信頼性は揺るがない 仙台高裁判決は、政府機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」に基づいて試算しておけば、原発の全電源喪失を引き起こす津波の可能性を認識できたとしている。この「予見可能性」は多くの訴訟で認められてきたが、刑事裁判や国の責任を否定した集団訴訟判決の中には、長期評価の信頼性が十分ではないと判断した例もある。長期評価の信頼性は揺るがない。これが高裁の判断だ。阪神大震災後に法律に基づき国が設置した機関で一線級の学者がまとめた見解は、単なる研究発表ではない。一般的な防災の指針作りへの活用が予定されており、慎重に安全を確保すべき原発が無視できるはずがないというわけだ。 ◇対策は複数あった -②の結果回避の可能性については。東電と国は防潮堤を設置しても事故は防ぎきれなかったと主張したが、判決はその対策だけでは不十分だと一蹴している。他の電力会社は、重要な設備がある建屋に水が入らないようにするなど別の対策も進めていた。東電と国は、防潮堤以外の対策で事故を回避することは不可能だった、とは立証しなかった。-国の姿勢を厳しく批判する判決でもあった。こんな一節がある。「原子力事業者は営利企業で利益確保のため、ややもすれば津波対策を先送りしたり、極力回避したりしようとする。規制当局はそれがあり得るとふまえて、安全寄りの指導、規制が期待されている」。原子力を推進してきた国がその役割を果たさなかったことを、判決はしっかりと指摘している。 ◇被災者の全体救済を -仙台高裁判決は、国の賠償基準よりも賠償の額や対象範囲を広げた。中間指針など国の賠償基準を上回る損害があるかを、区域ごとに1律に評価して水準を引き上げ、賠償対象も1審判決の約2900人から3450人に広げた。中間指針は福島南部や会津地域、隣接県の住民は被害者とされてこなかったが、判決では会津でも、子どもと妊婦の被害が認められた。福島全59市町村の住民が原告となった集団訴訟で、中間指針の不十分さが明確になった。これは原告だけではなく、裁判をしていない県民全体に影響がある点で重要だ。-賠償のあり方をどのように見直すべきか。中間指針の見直しはもちろんだが、東電だけではなく国も等しく責任を負わないといけない。国は「原発政策を推進してきた歴史的経過を鑑みて社会的責任を負う」といって法的責任を否定し、東電の後方支援のような形をとってきた。だが仙台高裁判決が認めたように、国は当事者だ。法的義務として、被災者救済をしなければならない。 ◇政府と国会の出番だ -新たな法律が必要か。 原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)は、過失を要件とせずに事業者の責任を認めており、被害者救済には優しく見える。だが、この法律の目的は「被害者の保護」と「原子力事業者の健全な発達」で、簡単に言えば金を払うから原発をやらせろという法律だ。かつての公害、水俣病、ハンセン病、薬害と同じように、国に対して被害に見合った救済を義務付ける法律が必要となる。お金だけではなく、医療や生活再建のサービスなどを制度化すべきだ。 -来年1、2月には東京高裁で判決が出る。仙台高裁判決の流れが続いてほしい。いずれの高裁判決も、国、東電は上告するだろう。最高裁では3訴訟で一括して、国の責任論を判断する可能性がある。国を加害者だと確定させたい。そして、原告以外の全体救済につなげないといけない。原発事故から10年を前に、政府と国会にはやるべき仕事があるはずだ。 ◇賠償請求には三つの方法 東電が支払い拒む例も 被災者が東電に賠償請求する方法は、①東電への直接請求②裁判外紛争解決手続き(ADR)の利用③裁判所への提訴-の三つがある。東電は国の「中間指針」に沿って賠償額を決めるが、指針を絶対視して支払いを拒む例がある。 ADRは国の原子力損害賠償紛争解決センターが仲介し、申し立てから和解案提示までは10カ月程度かかる。被災者の事情に応じて中間指針から賠償金を増やした和解案を、被災者と東電の双方が受け入れれば、賠償金が支払われる。だが、東電が集団申し立ての和解案を拒む例が目立つ。 東電や国に損害賠償を求めた被災者の集団訴訟は約30件あるが、確定判決はまだない。東電と国の津波対策を巡る責任や、中間指針による賠償金が妥当かが主な争点。東電の責任は全判決が認めている一方で、国の責任について判断が割れている。複数の判決が中間指針を超えた賠償金の支払いを命じている。 東電による賠償には、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構に国債を交付し、現金化して東電に無利子で貸し付ける資金が使われている。税金を機構を通して使う仕組みだ。東電によると、支払総額は10月9日時点で約9兆6171億円。 原文

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生業訴訟最高裁へ 国と東電、住民双方上告via福島民報

[…] ■津波予見判断、救済範囲に不服  国の訴訟手続きを担当している原子力規制庁の担当者は十三日に記者会見し、仙台高裁判決が「国と東電は福島第一原発への津波到来を予見できた」と認める根拠とした国の地震予測「長期評価」について「信頼性は低く津波を予見できなかった。東電に対策を命じても事故は防げなかった」と主張。判決は法令解釈を誤っており、最高裁の判断を仰ぐ必要があると説明した。  東電は「判決内容を十分に精査した結果、総合的に判断して上告することとした」とコメントした。  原告側は控訴審判決を評価していた。国と東電に被災者の早期救済のため上告しないよう要請したが、応じないと判断。対抗策として二審で賠償請求が退けられるなどした四十八人が上告した。今後、残る住民も加わる予定。県庁で記者会見した原告団長の中島孝さん(64)=相馬市=は国と東電の姿勢を「被災者救済に誠実に向き合うことを回避する傲慢(ごうまん)な態度」と憤った。  弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士は「最高裁に移るのは本意ではなく、国と東電の対応は遺憾だ」と述べた。県北、県中など自主的避難等対象区域に住んでいた原告への賠償を減額した点など高裁判決には課題も残るとした上で「判決の不十分な部分を補うべく、主張立証する」と語った。  九月三十日の仙台高裁判決は、全国に約三十ある同種訴訟のうち、国を被告に含む訴訟では初の高裁判断だった。上田哲裁判長は国と東電の責任を認めた二〇一七(平成二十九)年十月の一審福島地裁判決を維持し、国と東電は原発の敷地を超える津波の到来を予見できたと判断した。賠償額を一審判決の約五億円から約二倍に上積みした。国の賠償基準「中間指針」で対象に含まれていない会津地方や栃木、宮城両県の一部地域の住民にも賠償を認めるなど救済範囲も広げた。  原発事故を巡る集団訴訟では、原告の早期救済を理由に国を被告とせず、東電のみに損害賠償を求めた二件の訴訟が既に上告審に進んでいる。 […] 全文

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「私は福島を知ってしまった。だから通い続ける」~福島原発訴訟・弁護団事務局長の思いvia 論座

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟が問いかけるもの 馬奈木厳太郎 弁護士 2020年10月13日 「東電による不誠実な報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものといわざるを得ない」  「一般に営利企業たる原子力事業においては、利益を重視するあまり、ややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから、規制当局としては、原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ、安全寄りの指導・規制をしていくことが期待されていたというべきであって、上記対応は、規制当局の姿勢としては不十分なものであったとの批判を免れない」  仙台高裁の法廷に、裁判長の声が響きます。  判決言渡しが終わると、期せずして廷内に拍手が沸き起こりました。門前では、「勝訴」「再び国を断罪」「被害救済前進」の3つの旗が、歓声と大きな拍手のなか高らかに掲げられました。 […]  私たちの裁判の目的は明確です。3つのキーワードで表しています。 1つが、”原状回復”です。交通事故で家族を失ったとき、残された家族が最初に思うことは、決して「金を払え」ではないはずです。「家族を返せ」と思うはずです。現実にはそれができないので、「できないのなら、せめてお金を払え」、こういう順番のはずです。  今回の裁判も同じです。まず、「元に戻せ、原状回復しろ」が一番目の要求になります。ただ、注意していただきたいのは、ここでいう”原状回復”は、たとえば、「2011年3月10日に戻せ」ではないということです。  3月10日であれば、確かに事故は起きていません。しかし、事故の原因となった原発は存在しています。私たちは、これでは足りない、被害を生み出すことがない状態にせよと求めています。ですから、私たちのいう”原状回復”は、”放射能もない、原発もない地域を創ろう!”という意味でとらえられる必要があります。広い射程をもって”原状回復”という言葉を使っているのです。  2つめは、被害の”全体救済”です。いま約4500名の原告で裁判をしています。ここで強調したいのは、これらの原告は、「自分たちだけを救済してくれ」と言っているわけではないということです。  一般的に裁判というと、貸した金を返せとか、家を明け渡せといった請求となり、訴えた人の請求が認められるか否かだけが問題となります。ところが、この原告たちは、そういった話はしていません。「自分たちだけを救ってくれ」という話を超えた主張をしています。この裁判を通じて何を求めているのか、それは個別救済ではなく、”全体救済”を求めているのです。  具体的にいうと、「あらゆる被害者の被害を救済せよ」、「被害者のいる限り救済せよ」ということを求めています。これは判決をテコとして、全体救済のための制度化を要求しているということです。  つまり、今回の事故について国に責任があると認めさせることによって、国には被害を救済する義務がある、いわば償いをしなければならないことが明確になります。  では、どんな形で償いをさせるのか、それは様々な形で被害が出ているので、被害に見合った形で、被害に即した形でやるべきだ、生活再建や健康被害、除染、賠償など色々な問題があります。そうしたことに対する制度を作らせることを目的とした裁判ということです。  したがって、この原告の方々たちは、様々な事情から原告になれなかった人たちのため、今後被害が生ずることになるかもしれない人たちためにも、自分たちは頑張ると決意した方たちなのです。 では、どんな形で償いをさせるのか、それは様々な形で被害が出ているので、被害に見合った形で、被害に即した形でやるべきだ、生活再建や健康被害、除染、賠償など色々な問題があります。そうしたことに対する制度を作らせることを目的とした裁判ということです。  3つめが、”脱原発”です。今回の事故を受けて、被害根絶を真面目に追求しようとすると、エネルギーとしての原子力をどうするのかということに行きつかざるをえません。  「被害者をもう生みださないでほしい」と原告の方に限らず、みなさん仰います。「私たちのような被害者は自分たちで最後にしてほしい」とも仰います。これは、もう原発による事故、そうした被害者を生み出さないでほしいということです。  そうであるならば、どうそれを目指していくのか。お金の話だけでは問題は絶対に解決されません。先ほどの”原状回復”を考えないといけないし、もっと突きつめていくと原発をどうするのかということまで行くことになります。 私たちが”脱原発”を言っているのは偶然ではないのです。 […] 全文

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「控訴審で勝利を」/福島原発訴訟原告団が総会via しんぶん赤旗

 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団は27日、福島県二本松市で第5回総会を開きました。  総会は、仙台高裁の控訴審で勝訴を勝ち取るために▽公正判決を求める署名運動に取り組む▽諸団体、個人、自治体、議員との協働を強化する▽支部活動を活性化し、地域に根を張る取り組み▽事務局体制の強化―の四つの方針を決めました。  また「この国の為政者と原発を進めてきたすべての勢力に対して、自らの過ちを認めて甚大な被害に対する十分な償いをさせるまで、そして原発ゼロの完全な勝利まで福島県内および全国でたたかうすべての原発事故被害者と力を合わせてたたかい続けることを宣言します」とのアピールを採択しました。 […] 全文

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