Tag Archives: 廃炉

私と故郷と原発事故 via NHK Web特集

ディレクターの私のふるさとは、福島県浪江町。10年前の原発事故で全町避難となった町だ。原発事故直後から福島に通い、廃炉や復興の現状について番組を作ってきた私。常に感じてきたのは、ふるさとの人たちの複雑な思いを、より深く伝えたいという思いだった。実家の家族が被災した、いわば“半当事者”だから伝えられる、大事な話があるような気がしたのだ。しかし、思いがけず、“当事者”だからこそ聞けないことがある、という壁に突き当たった。その時、大きな助けになったのは、一緒に取材を行った“当事者ではない”カメラマンの存在。2人で苦悩しながら「なにを聞き、伝えるべきなのか」を模索しつづける日々だった。(名古屋放送局ディレクター 水谷宣道、映像センターカメラマン 井上秀夫) 話を聞こうとしたのは、原発作業員や役場の職員など、事故後もしょっちゅう顔を合わせ、一緒に酒を飲んでいた同級生たち。しかし、『カメラの前で本音を話せば、誰に何を言われるかわからない』と、ことごとく取材を断られた。 長年メールのやり取りを続けていた親友とは連絡が取れなくなり、友人の女性からは『原発事故避難者だと知られ、子どもがひぼう中傷を受けたら、責任は取れるのか?』と、泣きながら訴えかけられた。『結局お前はよそ者。俺らの気持ちはわからない』とも言われた。 放射能汚染、賠償、避難者へのいじめなど、様々な問題が複雑に絡み合う原発事故の被災地。取材が簡単ではないことは知っているつもりだった。それでも、ふるさとの力にもなれるのではと始めた取材で拒絶され、長年続いてきた友人関係が、一瞬で崩れてしまいそうになるのは、つらいことだった。 なんとか友人の協力を得て、同世代たちの現状を描く35分のドキュメンタリー番組を完成させた。しかし、当初伝えたいと思っていたざらざらした本音や、原発事故の複雑さが、十分伝えきれたとは思えなかった。 […] 原発事故前、2万1000人が暮らしていた浪江町。2017年に、町の中心部で避難指示が解除されたが、いま町で暮らしている人は、1600人余り(2021年3月現在)。仕事や子育てなど様々な事情から、2万人近くの当時の町民が、県内外で避難生活を送っている。 「浪江とのつながりを持ち続けたい」と、住民票を町に残したまま避難を続ける人も多かったが、今は、住民票を避難先に移す人も増えている。 事故から10年がたとうとしていたが、ふるさとの復興が進んでいるとはなかなか思えなかった。 取材への協力を頼むと、今度は、多くの人が「協力する」と言ってくれた。ある友人は「10年がたつ今なら話せる」と言い、別の友人は「話すことで自分なりにけりをつけたい」と言った。 思わぬ告白 町民を翻弄した「賠償」 先入観を持たずに、ふるさとの人々の声に耳を傾けてみようと始まった取材。テーマが少しずつ見えてきたのが、友人の父親を取材したときだった。 事故後、町の幹部として復興に取り組んできた男性は、町長選に立候補するものの落選。その後、首都圏に住宅を購入し移住した。 取材中、雑談をしていると、突然男性が語りだした。「俺をだめにしたのは賠償だ」何を言い出すのかと少し驚き聞き返すと、男性はこう続けた。 「町の人たちに『賠償をもらったからあいつは町を出た』と陰口を言われていたが、あながち間違いじゃないんだよ。たしかに、復興のために頑張っていたときは、賠償なんてどうでもよかった。でも、何かに挑戦してだめだったとき、賠償が効いてくるんだ。俺は町長選に落ちたとき、これだけの金があれば、もう無理しなくていいかなと思った」 ためらう自分 賠償について聞く事 原発事故の被害の償いである「賠償」。土地、家屋、精神的苦痛など、さまざまな損害についての賠償が、東京電力から被災者に支払われた。 着の身着のままの避難を余儀なくされた住民たちの生活再建などに大きな役割を果たした一方で、賠償をめぐり、被災者が、「賠償金をもらい、仕事をせずに不自由の無い暮らしをしている」など、いわれなき中傷や差別を受けることもあった。 デリケートな問題で、誤解や差別につながりやすいこともあり、住民はこれまで多くを語ってこなかったが、住民のさまざまな判断に大きく影響を与えた要素であることは間違いなかった。 男性の取材を機に、私は、ふるさとの人たちに「カネ」についてきちんと聞くことで、復興とは何だったのかを考えていきたいと思うようになった。 しかし、私は、再び大きな壁にぶつかった。聞くべきと思った質問を、なかなか聞けなくなっていったのだ。踏み込んだ質問をしようとすればするほど、その刃が自分自身に向かってくるような気持ちがしたのだ。 ある夫婦に話を聞いたときのことだった。彼らが暮らしていた地区は、当初、数年後の帰還をめざす「居住制限区域」となる案を町から提示されたが、地区の区長らが変更を要望し、長期間帰ることが難しい「帰還困難区域」となった。 当時、帰還困難区域の住民のほうが、受け取れる賠償の額が多いことになっていたため、他の地域の人からは、“カネ目当て”の選択ではないかと陰口をたたかれたこともあったという。 私は夫婦に、賠償を多く得て「帰還困難区域」となることをどう思ったのか、陰で言われていたことが事実だったのか、確かめたいと思った。だが、結局聞けなかった。 私は、賠償金をもらっていた私の両親から、賠償をもらいたくてもらっているわけでもないことや、後ろめたさすら感じていること、そして、周りの目を気にして、肩身の狭い思いで暮らしていることなどを聞かされていた。それがわかっていて、答えづらいであろう問いを突きつけることはできなかった。 結局、井上カメラマンが、質問をする趣旨を説明したうえで、その問いを発した。すると夫は、しばらく考えた末、「戻れない以上、高いお金がもらえるなら、それはそれでいいなとは思った」と答えた。 同時に、戻れるなら賠償はいらないと思っていたし、愛着ある家や持ち物に値段をつけられることも嫌だったと語った。 おそらく、ふるさとに戻ることが現実的に難しいという状況に直面して、賠償金をもらうという苦渋の選択をせざるを得なかったのだろう。ふるさとの人たちが抱えてきた葛藤の一端をまたかいま見た気がした。 廃炉・除染… 原発のそばで生きるリアル 除染作業に関わる同世代の友人へのインタビューも、精神的にこたえるものだった。町では、廃炉や除染など、原発事故の後処理に、今も多くの住民が携わっていた。 被害を受けた当人たちが今も後処理に関わっている事実を、本人たちはどう捉えているのか?それは、「地域と原発」というテーマを考えるにあたり重要な問いだと、取材クルーでは考えていた。 しかし、私には聞くことができなかった。その質問には、「原発とともに暮らしてきた人たちは、結局これからも、原発に頼るしかないのではないか」という、よそ者目線の「哀れみ」が含まれる質問だと感じたからだ。 私自身これまで似たような質問をされ嫌な思いをしてきたし、この10年、同じ経験をした町の人たちも多いのではないかと思っていた。 結局、質問できない私を見かねて、井上カメラマンが聞いた。すると、その場にいた別の町民が「また、そのステレオタイプな質問ですか」と嫌みを言った。外からの遠慮のない視線にさらされ続けてきた彼らのせめてもの抵抗だったのだろう。 それでも、友人はしばらく考え込み、ことばを絞り出し、真摯(しんし)に答えた。「事故前はそれで町が潤っていたし、しょうがないよね。今はその仕事しかないし、町のこれからの経済をまわしていくためには、廃炉はやはり大事だよね」 … Continue reading

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大前研一「これからの福島原発の話をしよう」 via President Online

事故から10年、福島原発の3大問題 福島原発が抱えている課題を大別すると3つある。1つ目は廃炉の難しさ。構造的には原子炉内部は完全に破壊されているはずだが、正確な実態は今もわからない。メルトスルー(炉心の溶融貫通)した燃料デブリに近づけば近づくほど放射線量が高くなるので、遠隔ロボットやカメラを投入してもすぐに劣化して壊れてしまうのだ。 […] 処理水は太平洋沖合に放出すべし 2つ目の課題は増え続ける汚染処理水である。デブリ冷却のための注水に加えて、地下水や雨水が原子炉建屋に流れ込むことなどで発生する放射能汚染水は、今も毎日約140トンずつ増えている。これを多核種除去設備(ALPS。62種類の放射性物質を取り除けるが、トリチウムは除去できない)などで浄化処理した「処理水」を敷地内に増設してきたタンク約1000基に貯蔵してきたが、もはや置く場所がほとんどない。東京電力によれば2022年夏以降に保管容量は限界を迎えるという。 […] 3つ目は使用済み核燃料の問題 3つ目は使用済み核燃料の問題である。この2月末、福島第一原発3号機の使用済み燃料プールに残っていた核燃料556体の取り出しが完了した。メルトダウンを起こした1~3号機で搬出を完了したのは初めてのことだ。1~6号機の核燃料取り出しは、31年に完了する予定。しかし取り出しを終えたのは3号機と4号機だけで、1、2号機には依然として計1007体の使用済み核燃料が残っている。 使用済み核燃料を抱えているのは、福島原発だけではない。使用済み核燃料は、原子炉から取り出された後も熱を帯びているために数年単位の冷却が必要で、原子炉建屋の上部に設置された燃料プ―ルに冷却、貯蔵されている。日本中の原発には、これが大量に貯め込まれているのだ。 なぜこれほどの使用済み核燃料を保有しているかと言えば、政府・自民党がいざとなったら90日以内に核兵器を製造できるニュークリアレディ(核準備)国を目指していたからである。使用済み核燃料からプルトニウムなどを抽出して再利用するプルサーマル技術やウランの利用効率を飛躍的に高める高速増殖炉などの開発政策は、「資源の有効利用」を謳うたいながら核兵器の燃料であるプルトニウムを実は国内に蓄えるための口実でもあったのだ。日本は(長崎型の)核爆弾を1万発ぐらい造れるプルトニウムを保有していると言われている。 しかし1兆円超の巨費を投じてきた高速増殖炉もんじゅが廃炉になり、世界中で濃縮ウランが余っている状況下でプルサーマル計画は頓挫した。使用済み核燃料の再処理についても方向性が定まらないまま、各原発内の燃料プール貯蔵容量は限界に近づきつつある。 使用済み核燃料を再処理する際に出る高レベルの放射能廃棄物「核のゴミ」。この最終処分場について、北海道の寿都町と神恵内村が国の選定プロセスである文献調査(地質図や学術論文に基づく調査)に応募した。文献調査に最大20億円、第2段階の概要調査には最大70億円の交付金が国から出る。過疎や財政難に悩む自治体にとっては魅力的だが、最終処分場の誘致まで進むかどうかはわからない。 核のゴミをガラス固化体にして地下300メートル以深に埋める「地層処分」にするのが国の方針だが、最終処分場はいまだに決まっていない。ガラス固化の技術も未完成。フランスの技術を輸入してやっているが、ゼロから考え直さないと技術的に難しいのではないかと思う。 原子力人材不足の前に方針を決定せよ 核のゴミは国民の電力消費の結果として出たものだから国内で処分するしかない。しかし、この問題はスウェーデンとフィンランド以外、最終的な保管場所が決まった国がないほどの難問だ。バーゼル条約で産業廃棄物は「それが発生した国で処分すべき」と定められているため、国土の広大な国に処分を頼むことも難しい。 率直に言って、最終処分場は福島第一原発がある双葉町と大熊町にするしかないと、私は以前から考えている。原発用地は返すときには廃炉にして施設を解体し、更地に戻して返すことになっている。しかし爆発事故を起こした原子炉の敷地内などは、ほぼ永久に居住不可能と思われる。汚染状況からして更地に戻して返せるのは100年後のことだろうし、返してもらっても地元としても持て余すだけだ。 であれば、住民には手厚い補償をし、周辺も含めて国有地として国が買い上げるべきではないか。そこに最終処分場を造るのであれば比較的、合意も得やすいと思う。 逆の言い方をすれば、一進一退の苦しい廃炉作業を続けているのは原状回復して返す契約があるからで、国が買い上げてしまえばチェルノブイリのように缶詰にして永遠のセキュリティエリアにしまうという考え方もある。 震災、原発事故から10年経ってハッキリしたのは、原発問題にしても、今のコロナ問題にしても、日本政府がいかに無能で問題解決力がないかということ。原発問題は、(アメリカと同様に)事故以降に学生の「原子力離れ」が進んでいる現状を鑑みるに、早く手を打たなければ原子力人材が枯渇していき、半永久的に対処不能になってしまうことも危惧される。もう先送りは止めて、ここで国が意思決定しなければ、ただでさえ長期低落していく日本の歪みは修復不能なものになりかねない。 全文

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福島第一原発事故10年、特別除染地域の85%で除染進まず 廃炉計画では新たな代替案が不可欠 via グリーンピース・ジャパン

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは(東京都新宿区、以下グリーンピース)は本日、2つの新報告書『福島第一原発 2011-2021年:除染神話と人権侵害の10年』と『福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案 ~プランAからプランB、そしてプランCへ~』を発表しました。『福島第一原発 2011-2021年』では、福島県飯舘村南部の民家、浪江町の民家などの放射線測定調査から、再汚染が起こっている状況について報告しています。また、森林のほとんどが除染の対象となっていないことから、政府が計画を策定し除染事業を進める特別除染地域(SDA)の85%が除染されていないことが示されています。一方、『廃炉計画に対する検証と提案』では、現在の東京電力福島第一原発の廃炉計画が30~40年以内に成功する見込みは低く、代替案が求められると指摘し、具体的な提案をしています。 <報告書概要> 『福島第一原発 2011-2021年』 グリーンピースの放射線専門家チームは2011年3月26日以降、過去10年間で32回の調査を実施してきました。主な調査結果は以下の通り。 政府のデータを分析すると、政府が除染の責任を負う840平方キロメートルのSDAの大部分が放射性セシウムで汚染されたままであり、除染された面積はSDA全面積の15%程度に過ぎない。 政府の長期的な除染目標である毎時0.23マイクロシーベルトがいつ達成されるのか、その時期は決まっていない。住民は、公衆被ばく限度の年間1ミリシーベルトを超える放射線に何十年もさらされることになる。 2017年に避難指示が解除された地域、特に浪江町と飯舘村では、放射線レベルが安全といえるレベルを超えたままであり、住民を潜在的ながんリスクにさらす可能性がある。避難指示の解除を継続する計画は、公衆衛生の観点から受け入れられない。 2018年まで、SDAの除染にはのべ1300万人の除染作業員が雇用されていた。労働者のほとんどは低賃金の下請け業者であり、限定的な効果しかない除染プログラムのために、不当な放射線リスクにさらされてきた。 『福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案』 元ゼネラル・エレクトリック社で東電福島第一原発などに勤務していた原子力コンサルタントの佐藤聡氏(下記著者紹介を参照)に、グリーンピースから執筆を依頼した。 佐藤氏による現行の廃炉計画の問題点 3基の原子炉圧力容器に残る数百トンの燃料デブリを回収するための信頼できる計画はない。 原子炉を冷却するための水、建屋に流入する地下水の汚染、タンクに蓄積される放射能汚染水は、新たなアプローチを採用しない限り、今後も増え続ける。 燃料デブリが回収されたとしても、それも敷地外で保管するというのは非現実的。現行の計画は、現行ロードマップの30~40年という時間枠では達成不可能である。 佐藤氏による代替案 長期的に安全な格納容器を建設し、燃料デブリの除去を50~100 年以上遅らせることを含め、アプローチを抜本的に再考し、新たな廃炉計画を立てる。 中長期的には、補強を施した一次格納容器を不完全な一次境界、原子炉建屋を二次境界として、放射能を閉じ込める。それと並行して、作業員が高い放射線リスクにさらされずに作業ができるロボット技術を開発する。 放射能汚染水の増加を防ぐため、燃料デブリの冷却を水冷から空冷に変更する。さらに、福島第一原発敷地に深い堀を建設し、地下水から隔離された「ドライアイランド」にする。 グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、鈴木かずえ「過去10年間、政府は東電福島第一原発の周辺住民に対して、除染をすればすべてが元通りになるかのような誤解を与える説明を繰り返してきました。しかし現実は、福島県の7割以上を占める森林は除染されていません。そのため、森林が放射能の貯蔵庫の役割を果たし、台風などのたびに、放射性物質を放出しています。放射能汚染には終わりがありません。 また、東電福島第一原発についても、政府と東京電力は、40年で廃炉作業が完了し、東電福島第一原発を更地にするとも受け取れる説明を続けていますが、技術的な観点や最終処分場の問題などからも、実現は不可能でしょう。放射線状況についても、廃炉についても、政府の説明は、欺瞞に満ちていると言わざるをえません。しかし、原発事故の被害を終わらせるためにも、また、真に原発事故を収束させるためにも、今日から、東電も政府も、放射線状況についても、廃炉についても、現実に向き合い、市民に事実を話すべきです。 以上 報告書全文 福島第一原発 2011-2021年:除染神話と人権侵害の10年 福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案 ~プランAからプランB、そしてプランCへ~ (英語) グリーンピース・ブリーフィングペーパー『東電福島第一原発には、プランCが必要』 関連資料 グリーンピース特設サイト『写真と証言で綴る12人の10年 福島の記録』(3月4日公開) 全文

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福島第一原発「廃炉」を選んだ政府と東電…10年が経った今の「ずさんな実態」via gendai.ismedia.jp

町田 徹 原子力政策を一度ただすべき 格納容器内の水位と気圧の低下、そして地震計の故障放置――。 2月13日夜に東北地方を襲った強い地震は、40年かかるとされる東京電力・福島第一原子力発電所の「廃炉」作業を続けることのリスクを改めて浮き彫りにした。「廃炉」は、同原発の設備を解体・撤去のうえ除染して事故前の状態に戻し、人々の故郷への帰還を可能にするという触れ込みだ。 短期間でリスクを大幅に低減できる「石棺」化や「水棺」化の方が安全かつ経済的で現実的だという専門家たちの声を無視する形で、政府・東電が原状回復は可能だと言い張るために断行した国家プロジェクトである。 原子力の分野では、他にも難問が山積みだ。使用済み核燃料の処分地捜しは緒に着いたばかりだし、目玉の高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まったにもかかわらず、実現性に疑問符が付く核燃料サイクル計画全体の見直しはほとんど進んでいない。 その一方で、再び原子力を日本のエネルギーの中心に据えようという議論が勢い付いている。ゼロカーボン発電として、原発の再稼働の加速や新設・増設の容認を求める声が経済界から噴出しているのである。 人類史上最悪の原子力事故となった福島第一原子発事故の教訓は、いったい何だったのか。3月11日は、あれから10年の節目にあたる。今一度、原子力政策をただすべき時ではないだろうか。 福島、宮城両県の一部で最大震度6強を記録した地震から一夜明けた先月14日、原子力規制委員会は、廃炉作業中の東電・福島第一原発の5、6号機と廃炉が決まっている福島第二原発の1号機で、使用済み核燃料の貯蔵プールから水が溢れ出したと発表した。東電は、漏れた水はわずかで、いずれもセキの中にとどまっており、外部への影響はないとしていた。 が、廃炉作業下の福島第一原発が依然として不安定な状態にあることを浮き彫りにするトラブルは続いた。 ずさんな廃炉作業の実態が露呈した 最初は先月19日。東電が1、3号機の原子炉格納容器の水位が低下していると発表した。13日の地震により、格納容器の損傷部分が拡大、原子炉建屋内に漏れ出る水量が増えたらしいというのだ。 同社は、原子炉への注水は継続しており、格納容器の底に溜まっているデブリ(溶融核燃料)の冷却には問題がないとしたものの、同社自身が認めているように格納容器の損傷が拡大して漏れ出る水量が増えた可能性がある以上、楽観はできない。 水位が低下を続けると、デブリが露出してデブリから発生する塵が外部に漏れ出てくる可能性や、格納容器内の圧力低下によって汚染されたガスが拡散するといった深刻な懸念があるからだ。 […] 次いで、先月21日の朝、1号機の原子炉格納容器の圧力が低下していることが判明。翌22日の朝には、周囲の気圧と同程度まで下がり低下が止まったという。やはり13日夜の地震によって10年前の事故で損傷した部分が何らかの影響を受けて、気体が外に漏れていると、東電はみていた。 そして、開いた口が塞がらない話が、2月22日に開かれた原子力規制委員会の会合で発覚した、3号機で昨年3月に設置した地震計が2台とも故障しており、取得できたはずの貴重な震度データを取得できなかったというのである。東電は故障を知りながら交換していなかったという。 福島第一原発での東電の杜撰な「廃炉」作業を見るにつけ、チェルノブイリ発電所事故で「石棺」化という封じ込め策を採用した旧ソ連の判断にはそれなりの合理性があったと改めて思い知らされる。 […] 全文

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「40年は無理なんて…」 廃炉、取り繕いきれない現実 via 朝日新聞

 あと1カ月で事故発生から10年を迎える東京電力福島第一原発。敷地内の放射線量はかなり下がったが、廃炉作業は大幅に遅れ、30~40年で完了する目標はかすんできた。廃炉の最終的な姿を語らずに時期だけを掲げるこれまでのやり方は、限界に近づいている。 政治家が値切った「40年」 廃炉、置き忘れられた議論 […] 直接の理由は新型コロナウイルスだった。英国で開発中の専用ロボットアームの動作試験が、工場への出勤制限などの影響で滞った。英国では変異ウイルスも猛威を振るい、日本へ運ぶめどもたたなくなった。  未曽有の原発事故を受けて、国と東電が11年12月に廃炉工程表を掲げてから、工程は遅れに遅れを重ねてきたが、今回の延期には特別な意味がある。「30~40年後に廃炉完了」と並んでずっと堅持してきた「10年以内のデブリ取り出し着手」という重要目標を断念したことになるからだ。  デブリは、溶けた核燃料が周りの金属などと混ざりあって固まった物質。強い放射線を放ち、ロボットすら容易に近づけない。硬さも成分も、どこにどれだけあるかも詳しくは分からない。1~3号機に残る総量は推定で約800~900トン。その取り出しは、前人未到の最難関の事業だ。  当初の工程表では、取り出し前に遠隔でデブリを切断・掘削して性状を調べることも想定していた。だが、カメラ調査すら予定通り進まず、進むほどに困難さがみえてきた。国と東電は改訂にあわせ、着手時の取り出し規模を「小規模」から「試験的」へと後退させたが、「10年以内」だけは変えなかった。「30~40年」の全体シナリオを守るための一線だったからだ。 […] それでも、廃炉を技術面で率いる原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元・理事長は「1年の遅れは、全体の遅れに比べたらたいしたことない」と話す。廃炉完了の時期を見直す気もない。「今の時点で『40年は無理』なんてとても言えない。もうちょっと調べさせて欲しい。40年を目指して全力でやる。これ自体は、難しい仕事を進める一つの原動力なんです」(小坪遊、藤波優) 全文

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処理水タンク1000基、廃炉を阻む 福島原発のいま via 日本経済新聞

事故から10年 現地ルポ 3月で事故から10年を迎える東京電力福島第1原子力発電所に9日、日本経済新聞の記者が入った。たまり続ける処理水を保管するタンクが林立し、廃炉作業を妨げる。原子炉建屋内にはなお多くの溶融燃料(デブリ)が残る。敷地の96%は防護服なしで行動できるようになったが、これから難作業が待ち受ける。 (略) 福島第1が突きつけるのは、先送りが許されない現実だ。汚染水から大半の放射性物質を取り除いた処理水が今もたまり続ける。現在の技術で十分取れない放射性物質トリチウムを含む。東電は137万トン分の新設を含む保管タンク約1000基を用意したが、既に9割が埋まる。大きな空き地もあるが、廃棄物置き場にする予定だ。タンク新設の余地は乏しい。 汚染水の発生は1日平均140トン(20年)と、この5年で3分の1以下に減ったが、22年秋にもタンクは満杯になる。政府は「いつまでも先送りはできない」(菅義偉首相)とし、海洋放出の決定に向けて関係者と調整中だ。デブリや核燃料の保管場所を確保するには、タンクの撤去が必要だ。 (略) 廃炉作業は原子炉を冷やし、汚染したがれきを撤去することから始まった。事故直後は敷地の端でも毎時200マイクロシーベルトという一般の人の年間被曝(ひばく)限度に約5時間で達する線量だった。今は1マイクロシーベルト未満。原子炉建屋などを除けば、ふつうの服でも立ち入れる。 だが現実は厳しい。1~4号機を見渡せる高台に立つと、測定器は毎時100マイクロシーベルトを超えた。 政府・東電がめざす廃炉完了まで残り20~30年。22年に2号機でデブリの取り出しを始める予定だが、1、3号機は不透明だ。デブリは推定で900トンあるが、状態が分からず手つかずだ。(福岡幸太郎) 全文は処理水タンク1000基、廃炉を阻む 福島原発のいま

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福島第1原発 2、3号機の格納容器上部で約2~4京ベクレル 原子力規制委調査 via 毎日新聞

東京電力福島第1原発事故について、原子力規制委員会は26日、2、3号機で丸いフラスコ状の「原子炉格納容器」上部の蓋(ふた)に当たる部分が、極めて高濃度の放射性物質に汚染されていたという調査結果の中間報告書案を明らかにした。格納容器内の底部などにある溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)周辺と同程度の放射線量で、廃炉作業の遅れなど影響が懸念される。 規制委は2013年から原発事故の調査や分析をしていたが、核燃料が溶け落ちる「メルトダウン(炉心溶融)」が起きた1~3号機内は放射線量が高く人が入れないため、調査を中断。放射性物質に汚染されたがれきが撤去されるなどして線量が下がり、19年10月に再開していた。  報告書案によると、蓋の部分は「シールドプラグ」と呼ばれ、円盤状で3枚重ねになっている。2号機の蓋の内側部分に付着したセシウムを推計したところ、約2京~4京ベクレル(京は兆の1万倍)、3号機では約3京ベクレルになった。放射線量は毎時10シーベルト前後とみられ、近づくと1時間以内に死ぬほどの強さだ。  大量のセシウムが付いた理由については、原発事故直後に蓋の部分で受け止めたためで、屋外に漏れるのを防ぐ役割を果たしていたと結論付けた。ただ、1号機は2、3号機より少ない約160兆ベクレルだった。水素爆発により、蓋の部分が変形した影響とみられる。 […]  規制委の更田(ふけた)豊志委員長は「燃料デブリがずいぶん高い所にあるようなもの。(作業中、放射線の影響を防ぐための)遮蔽(しゃへい)をどうするのか」と廃炉作業の課題を指摘。東電の担当者は「蓋の部分をどうするかは見通しが立っておらず、今後検討したい」と話した。 一方、3号機の水素爆発について、事故当時の映像を分析したところ、爆発が連続して起きていたことが明らかになった。これまでの原発では想定されていなかった水素以外の可燃性のガスの発生が考えられ、今後の安全対策ではそうしたガスも考慮した議論が必要になりそうだ。 […] 全文

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原発立地、国の厚い支援延長へ 福島事故後初も議論なし via 朝日新聞

原発を抱える自治体への財政支援を手厚くする特別措置法の期限が3月末に切れるため、政府は期限を10年間延長する改正案を今国会に提出する。期限を迎えるのは、2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後初めて。事故後の原発への反発は根強く、かつて原発の新増設を後押しする狙いで生まれた法律をそのまま延長することの是非は国会で議論になりそうだ。  この法律は「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」(原発立地特措法)。原発の立地自治体が道路や港湾を整備したり、企業誘致のための減税をしたりする際、国が通常よりも手厚く補助するものだ。所管する内閣府によると、19年度は計144億円が投じられている。  1999年に核燃料会社JCOで起きた臨界事故で、全国の立地地域が原発の新増設に慎重になったため、原発推進派の国会議員が中心になって00年に議員立法で成立した。当初から10年間の期限があり、原発事故直前の民主党政権下で期限が21年3月末まで延長された。今回は議員立法ではなく、政府が期限を31年3月末まで延長する改正案を月内にも閣議決定し、今国会に提出する方針だ。 (略) また、補助金の交付などの担当が複数の省庁にまたがるため、毎年どのような事業にいくら使われているかが、国民から見えにくいという課題もある。  原発立地特措法に詳しい千葉商科大学の原科幸彦学長は「原発の廃炉が主流になっている時代。立地地域の振興のためには、今後は原発依存ではなく自立性のある発展を遂げられるよう、別の法制度を作るべきだ」と指摘する。(編集委員・大月規義) 全文は原発立地、国の厚い支援延長へ 福島事故後初も議論なし

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福島第一、高濃度の汚染部分が判明 廃炉工程見直しか via 朝日新聞

 東京電力福島第一原発の2号機と3号機で、原子炉格納容器の真上にあるふたのような部分が極めて高濃度に汚染されていることが、原子力規制委員会の調査で判明した。事故時に格納容器から漏れた放射性物質が大量に付着しているらしい。容易に近づくことができず、この部分を動かすのは困難とみられる。規制委は「極めて深刻」とみており、廃炉工程が見直しを迫られる可能性もある。 […] 規制委は現場の線量が下がってきたとして、昨年9月に原発事故の未解明事項の調査を約5年ぶりに再開。これまでの東電などの調査で2、3号機のシールドプラグ付近の線量が異常に高かったことから、現地調査で周辺の線量を詳しく測定し直すなどして、汚染実態の解明を進めてきた。  その結果、3枚重ねの一番上と真ん中の板の間付近にあると推定されるセシウム137の量は、2号機で約20~40ペタベクレル(ペタは1千兆)、3号機で約30ペタベクレルに達した。周辺の線量の測定値から2号機のその部分の線量を推定すると、毎時10シーベルトを超えるレベルになる。1時間もそばにいれば人は死に至る。 […] 規制委は、メルトダウン(炉心溶融)で格納容器から漏れ出た膨大な放射性物質を、損傷の少なかった2、3号機のシールドプラグがとらえたことで外部への放出量が抑えられたとみて、年明けにもまとめる事故調査の中間報告書案に盛り込む。これほどの量のセシウムが集中した仕組みや理由ははっきりせず、今後も調査を進めるという。  シールドプラグが据え付けられた建屋最上階の開口部は、作業のため格納容器や圧力容器の内部にアクセスする主要なルートの一つ。廃炉の最難関工程とされる溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しでも、2022年以降に延期された試験的取り出しを終えた後の本格段階での活用が検討されている。  規制委の更田豊志委員長は12月下旬の会見で、シールドプラグの高濃度汚染について「デブリが高いところにあるようなものととらえてよい。廃炉にとって極めてインパクトの強い状況だ」と指摘。シールドプラグを撤去する作業は、どんな工法を選んでも極めて難しくなるとの見解を示した。東電は「デブリ取り出しの工法はまだ決まっていない。シールドプラグの状況をしっかり把握したい」と話している。(桑原紀彦) 全文

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1カ月で150人が街を去った 原発の廃炉が進むフランス via 東京新聞

(略) 原発を運営するフランス電力(EDF)は6月29日、老朽化を理由にフェッセンハイム原発の運転を停止。強気な市長の姿勢とは裏腹に、1カ月間で原発関連産業の職員ら150人以上が街を去った。裏通りでごみを回収していた男性(57)は「もう地元の少年サッカーチームが2つもなくなった」と嘆く。 ◆「原発がなくなれば、地域が死んでしまう」 仏北東部フェッセンハイムの農業地帯で8月、廃止を受けて解体を待つ原発 フェッセンハイムはライン川を挟んでドイツに接する。60年代まで、人口1000人以下の貧しい農村だった。しかし70年代に始まった原発建設で人口は倍増、生み出した雇用は約2100人分に上った。  EDFからの補助金も街を潤した。市年間予算430万ユーロ(約5億6000万円)の約3分の2に及ぶ。「原発なしに繁栄は考えられなかった。原発がなくなれば、地域が死んでしまう」と市長は憤る。  しかし廃炉後の跡地利用の議論は進まない。仏政府とEDF、ドイツ側を含む周辺自治体は2019年2月、地域の活性化へ向けた協議会設立に合意したが、代表は1年半たっても空席のまま。そもそも、原発解体の手引すらできていない。 仏政府は先月、新型コロナからの経済再建策として、原子力産業への支援を表明した。各地の原発解体で出る金属部品を除染、再利用する工場の計画にも前向きで、フェッセンハイムに建設する議論がある。  ブレンダー市長も計画に前向きだが、EDFが実際に建設するか決めるのは23年の予定だ。安全性を巡り長年にわたり原発閉鎖を求めてきたドイツ側からも、既に汚染への懸念から反対の声が上がる。飲食業アンジェリークさん(41)は「将来をイメージできないまま、さらに人が減りそうで怖い」と打ち明けた。 (略) 「閉鎖も跡地利用も、市に決定権はない」と無力感を示すブレンダー市長は、こう訴える。「街が生き残るには、人が住み続ける方法を考えるしかない。主要産業をなくした先、地域をどうするのか。国も電力会社も、向き合ってほしい」  全電力の7割超を原子力発電が占める世界最大の原発依存国フランスで、原発を取り巻く環境が揺れている。福島第一原発事故以降、政府は「減原発」の方針を掲げ、今年6月には国内最古の原発を停止した。しかし、「廃炉後」の展望は見えず、近年の猛暑や新型コロナウイルスの影響で、温暖化対策や経済対策としての再評価も起きている。原発大国のいまを追った。(フェッセンハイムで、竹田佳彦、写真も) 全文は1カ月で150人が街を去った 原発の廃炉が進むフランス

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