放射性廃棄物、海外処分に道筋 規制緩和で大型機器の「輸出」可能に via 朝日新聞

原発の放射性廃棄物は国内ですべて処分するという原則に関わる規制が、変わろうとしている。廃炉が相次ぐなか、低レベル廃棄物である一部の大型機器について、処分を海外業者に委託できるように輸出規制を緩和する。新たなエネルギー基本計画の改定案に方針が盛り込まれた。経済産業省が見直し案を検討するが、実施に向けては不透明な部分もある。

 海外での処分を検討しているのは「蒸気発生器」と「給水加熱器」、「核燃料の輸送・貯蔵用キャスク」の3種類の大型機器だ。いずれも原発の重要機器で、主なものだと長さは5~20メートル前後、重さは100~300トン前後もある。

 使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)ほど放射能レベルは高くはないが、低レベルの廃棄物として埋設処分などが必要だ。一部は放射能レベルが3段階のうち2番目の「L2」に該当し、地中で300~400年近く管理が必要なものもある。

 エネルギー基本計画の改定案に「有用資源として安全に再利用されるなどの一定の基準を満たす場合に限り例外的に輸出することが可能となるよう、必要な輸出規制の見直しを進める」と明記された。改定案には、今月3日から10月4日まで意見を公募している。

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 国際条約では、放射性廃棄物は発生国での処分が原則だ。相手国の同意があれば例外的に輸出できるが、日本は外国為替及び外国貿易法外為法)の通達で禁じている。

 経産省は大手電力会社の要望などをもとに、専門家らを交えて検討してきた。国内処分を基本としつつ、対象を3種類の大型機器に絞り、再利用されることなどを条件に例外的に輸出を認める方向だ。法改正をしなくても通達の見直しなどで対応できるという。古くなって交換後に原発敷地内で保管している大型機器も対象になるとしており、稼働中の原発の廃棄物が輸出される可能性もある。

 電力会社から海外業者への支払額ははっきりしておらず、コストがふくらむ恐れもある。安全な輸送方法など課題は多い。規制が緩和されても、実施まで時間がかかりそうだ。

 低レベルの廃棄物は電力会社が責任を持って処分することになっている。原発の稼働や廃炉にともなって増えているが、処分先が決まらないことが大きな問題だ。たまり続ける廃棄物への地元住民らの不安感もあり、海外での処分に期待する見方もある。

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東京大の岡本孝司教授(原子力工学)は、蒸気発生器は内部に配管が数千本走るなど構造が複雑で、一部が汚染された大型機器の解体に関するノウハウが国内にないと指摘する。表面を除染して解体すれば、8割ほどが金属としてリサイクル可能だという。岡本氏は「実績のある海外事業者に処理を委託してノウハウを学び、最終的には日本で処理できるようにするべきだ」と話す。

処分先のめど立たぬ廃棄物

 廃炉に伴って出る低レベル放射性廃棄物は、大型機器を含め最終的にどう処理するかが難題となっている。事故を起こした東京電力福島第一の6基を除く18基で計約16万5千トンに上る。うち9割以上は処分先のめどが立っていない。

 低レベルの廃棄物は放射能レベルが高い順に、原子炉の制御棒など「L1」、海外での処分を検討する大型機器にも含まれる「L2」、周辺の配管やコンクリートなど「L3」がある。放射能レベルに応じて地中数メートル~70メートルより深く埋めて、数十年から数百年管理する必要がある。例えばL2の場合は、地中にコンクリートピットなどをつくって埋設する。L1の場合は、活断層がなく火山から離れた場所の70メートルより深い地中に埋め、300~400年間にわたって管理するという。

 朝日新聞が電力各社に今年7月、発生見通しを聞いたところ、18基合計でL1が約3160トン、L2が約2万9320トン、L3が約13万2690トンに上った。

 このうち処分の見通しが示されているのは、日本原子力発電の東海原発(茨城県)のL3(約1万2300トン)分のみで、敷地内に埋設する計画だ。原子力規制委員会で審査しているが、L1、L2の処分先は決まっていない。

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 廃炉作業が進む原発では廃棄物が積み上がりつつある。日本原電の東海原発と敦賀1号機(福井県)、中部電力浜岡1号機(静岡県)の計3基では、L2とL3で計約1320トンが発生。いずれも敷地内で保管している。

 政府や電力各社は廃炉作業に絡む廃棄物の処分先の確保を急ぐべきだが、事実上先送りしてきた。この見通しを示さないまま輸出規制を緩めれば、「海外任せ」の流れが強まりかねない。

 使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)の最終処分先の確保も難航している。国の選定プロセスの第1段階にあたる文献調査が北海道の2町村で始まったが、地元の反対は根強く実現は見通せない。(川村剛志、藤波優、長崎潤一郎)

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