福島20代女性の叫び「私の甲状腺がんの原因が知りたい」via 女性自身

「私が甲状腺がんになったのは、“被ばく”の影響ではないと言われています。甲状腺がんは遺伝性のものが多いといわれますが、家族には甲状腺がんにかかった者はおりません」
 
そう思いを明かすのは、福島県郡山市出身で、現在は都内で暮らす佐藤彩香さん(仮名・24)。
 
11年3月11日に起きた福島第一原発事故。あれから9年。時間がたてばたつほど、佐藤さんの疑念は膨らむ。
 
「専門家が集まって、甲状腺検査について議論する福島県の“検討委員会”というものがあります。19年6月に、事故前より数十倍多く見つかっていることを認めながらも、〈現時点において甲状腺がんと放射線被ばくの関連は認められない〉と発表しました。検査も縮小の方向に向かっています。がんがこんなに多く見つかっているのは、何の影響なのか、うやむやにしないでほしい」

(略)

現在4巡目の検査を実施中だが、これまでに合計237人(悪性ないし悪性疑い含む)の甲状腺がんが見つかっている。(うち手術済みは187人で1人が良性)
 
佐藤さんは、福島第一原発が爆発した3月12日を、こうふりかえる。
 
「事故当時は中学3年生でした。あの地震で祖母の自宅が全壊して、近くの空き家に引っ越すことになったので、私も外で作業を手伝っていたんです。雨にも打たれてしまいました。その日以降も、給水車に並んだり進学する高校の制服を取りに行ったり。それで被ばくしてしまったんじゃないかと」
 
「県の甲状腺検査を初めて受けたのは、高校2年生のとき。特に問題のないA1判定でした。大学1年生の5月に検査を受けたときは、5ミリ程度の結節が見つかってB判定に。そのあと、二次検査を受けて、がんの告知を受けたのは半年たった11月頃でした」
 
検査を受けた福島県立医大の医師から、こう説明された。
 
「あなたの腫瘍は、気管に近いところにある。腫瘍が大きくなって気管にくっついたら、全身にがん細胞がまわってしまうリスクがある。早めに手術したほうがいい」
 
告知の時点で、腫瘍は8ミリ。5月に検査したときより3ミリ大きくなっていたという。
 
「気になってチェルノブイリ原発事故のことを調べたら、被ばくの影響で甲状腺がんになると、腫瘍が大きくなるスピードが早いと」
 
佐藤さんの場合は、告知を受けた半年後に、都内の専門病院で手術を受け、いまは元気だ。
 
小児甲状腺がんの患者をサポートする「あじさいの会」の代表で、原発事故のあと甲状腺検査も行なっている内科医の牛山元美氏は、福島県の検討委員会の論調に異を唱える。
 
「検討委員会は、被ばくの影響ではないという理由のひとつに、〈チェルノブイリでは事故当時5歳以下の子どもに甲状腺がんが増えたが、福島は10代に多い〉ことを根拠に挙げています。そう結論付けるなら正確な統計データが必須ですが、県は甲状腺がん患者の人数すら正確に把握しようとしていない。実際、私が相談を受けている患者さんの中には、少なくとも事故当時4歳だった方が2人いますが、発表されている人数には入っていません。これは県もわかっています」
 
さらに、福島県立医大の医師で、小児甲状腺がんの手術のほとんどを行なっている鈴木眞一氏も、2月3日に開催された国際シンポジウムの講演で、県の発表より19例も多い症例数を発表している。
 
つまり、少なくとも県発表の237人(悪性ないし悪性疑い)より患者数は19人多いということになる。
 
このように患者が増えていることについて、専門家の間では、「もっと年をとってから見つかるがんを、検査することで先に見つけてしまう“スクリーニング効果”だ」とか「一生ほうっておいても害がないがんを見つけて不要な手術する“過剰診断”だ」という声もある。
 
しかし、福島県で子どもの被ばく回避の権利の確認を求める“脱被ばく子ども裁判”の弁護士、井戸謙一氏は、「スクリーニング効果や過剰診断では説明がつかない」と反論する。
 
「2月14日に行なわれた裁判で、約180例の小児甲状腺がんの摘出手術を執刀した鈴木眞一氏が証言台に立ち、〈放射線の影響ではなく、検査したから見つかるスクリーニング効果だ〉と証言しました。しかし一方で、〈これまで行なった手術は適切で“過剰診断”ではない〉とも」
 
検査したからがんが見つかったが、そのがんは、ほうっておくと問題があるので手術は適切だと、執刀医師自らが、矛盾した証言を残しているのだ。

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担当の県民健康調査課に問い合わせると、「新コロナウィルスの対応で忙しく、しばらくの間コメントできない」との返答だった。
 
佐藤さんは、最後にこう述べた。
 
「とにかく、がんの原因がなんなのか知りたい。国策として原発を進めてきた責任があるのですから、政府が本気で調査して世界にもデータを公開していく必要があると思います」
 
まずは、正確な患者数を把握できる体制づくりが必要だろう。
 
(取材・文:和田珠輝)

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