<東海第二原発 再考再稼働>(2)ふるさと失いたくない バンドボーカル・TOSHI-LOWさんvia 東京新聞

二〇一一年三月に起きた東京電力福島第一原発事故で、県産のホウレンソウが出荷できなくなった。水戸市の実家が営む冷凍食品会社は、ホウレンソウが主力商品だったので、大ダメージを受けた。関西圏への出荷分は全部だめになり、それが何年も続いた。原発問題はエネルギーではなく生活の問題だと認識した。

 自分は若い頃に東京に出て、ふるさとを捨てた人間だと思っていた。でも福島の事故が起きたことで、ふるさとって大事なんだという郷土愛に気付いた。

 茨城県だって住めなくなるんだ、地元を喪失するかもしれないんだ、と現実味を帯びて感じた。ふるさとがなくなっていいとは思えなかった。

 それ以来、原発反対の声を上げている。アーティストだからではない。アーティストである前に国民であり、親であり、人間。おかしいことはおかしい、と言う。

 ファンは非日常を求めてライブに来るから、嫌がる人もいるが、原発の話をすることもある。「気付くのも気付かないのも自分次第。でも、気付いたら何かしなければならない」と伝えている。

 何を歌うかなんて自分たちの自由だと思っている。曲作りでは、聴く人の心に描かれる風景が、自分の訴えたいことと合っていればいい。「鼎(かなえ)の問」という曲では、原発事故をイメージしながら、自分が大事にしているものが失われていく情景を書いた。大事なものが何か、考えるきっかけになってほしい。

 十月の台風19号では実家も被災した。ボランティアで、県内の被災地で災害ごみの片付けなどを手伝った。台風のような災害は片付けたら復興できる。でも、原発事故はそれができない。

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