福島原発事故後、自死した3人の思い 野田正彰さん「精神鑑定書」公表に反響 via 高知新聞

(天野弘幹)

故郷喪失の苦悩
 季刊雑誌「NO NUKES voice(ノー・ニュークス・ボイス)」21号(鹿砦社)の巻頭リポートで、精神科医で作家の野田正彰さん(高知市出身)が、福島第1原発事故後に自死した男女3人について書いた精神鑑定書を全文公表し反響を呼んでいる。故郷を奪われ、苦悩を語ることもできず、自ら亡くなっていった人々。3人の内面を通し、精神を抑圧し、孤独や絶望へ追いやっていったこの社会が見えてくる。

 鑑定書は、東京電力の責任を問う裁判で、原告弁護士の依頼を受けた野田さんが書き、2014~17年に提出、証拠採用された。

(略)

「NO NUKES」で野田さんは3鑑定書全文に合わせ、亡くなった人の精神を鑑定する意味について書いている。

 13年夏に、鑑定の依頼者である保田行雄弁護士と、相馬市の丘陵を歩いた回想を交えながら〈亡くなった人からその心境を聴き取ることができない以上、その人が生きていた世界に少しでも身を置き、その人のまなざしになって周りの世界を眺めてみるしかない〉と記す。

 自宅を訪ね、自死の場所に立ち、遺族や友人、近隣の人に会って、故人が生きた道のりを知り、亡き声を聴き取る。そうやってまとめた鑑定書に、野田さんの文章は自然と思いがこもる。

 あえて今、法廷外で公表する理由は何か。それは〈福島市の被災地に生きる人びとの故郷喪失の苦悩、悲哀を分かってもらうために。彼や彼女が最後に見た景観を、あなたの眼で見てもらうために〉。 

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 あぶり出されているのは被災者に寄り添わない国、精神医療界の姿だ。震災直後、厚労省は災害関連死の認定について「自殺は精神疾患に基づくものであり、精神科医により診断されていること」という基準を出している。これは認定数を減らすための抑圧で、〈誰が死ぬ前に、精神科を前もって受診し、精神疾患であるという診断を取っておいて死ぬか〉と野田さん。

全文は福島原発事故後、自死した3人の思い 野田正彰さん「精神鑑定書」公表に反響

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