(取材考記)6時間の大作劇「福島三部作」 「夢の原発」が暗転、半世紀映す 藤谷浩二 via 朝日新聞

 3部作を通しで見ると上演時間だけで計6時間。そんな大作劇がこの夏、話題を呼んだ。

劇作家の谷賢一さん(37)が主宰する劇団ダルカラードポップで上演した「福島三部作」だ。東京電力福島第一原発のある福島県双葉町を舞台に、3兄弟を主人公に人々の暮らしや心情の変化をつぶさに描いた。母の故郷の福島で幼少期を過ごし、父が原発でも働いた技術者だった谷さんにとって、避けられないテーマだった。

劇中を流れる時間は半世紀。第一部(1961年)では東大で物理学を学ぶ長男の帰省と、行政や東電による原発立地計画が描かれる。第二部(86年)では原発反対派から容認に転じて町長に当選した次男が、チェルノブイリ原発事故をどう説明するか苦悶(くもん)する。

経済成長や便利さこそが善という原発に託した夢が一挙に暗転する第三部が切実だ。2011年末、三男が報道局長を務める地元テレビ局が被災者の声を丹念に集める。「原発以上に私たちを苦しめたのは、人間だ。人間の放つ悪意、差別、風評被害……」。谷さんが福島で長期間取材を重ね、聞き取った言葉を中心に構成した。

(略)

東京と大阪という電力の大消費地で通し上演し、福島県内でも昨年と今年で3部全てを上演する大プロジェクトは7、8日のいわき公演で幕を閉じた。「題材をお借りした福島に筋を通したかった。内容の正確性が当事者にさらされるのも大事だと思う」と谷さん。

11月には戯曲が刊行される。経済的な負担もあり再演は当面難しいそうだが、俳優たちの好演や3部それぞれに異なる谷さんの演出で戦後日本の移ろいを映した真摯(しんし)な舞台を、いつかまた見たい。
 (編集委員)

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