甲状腺がん報告書を一部修正へ〜 「被曝と関係認められない」見直し via OurPlanet-TV

東京電力福島第1原発事故以降、福島県民の健康診断のあり方を議論している専門家の会議「県民健康調査」検討委員会で8日、甲状腺検査に関する報告書を取りまとめる予定だったが、委員から異論が相次ぎ、7月末までに修正されることとなった。同委員会の部会が「現時点では甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とする「まとめ案」を提出していたが、複数の委員が「認められない」と断定する表現は時期尚早と反発。修正を求めた。

異論が続出したのは、2014~15年度に実施した2巡目の甲状腺検査に関する「部会まとめ案」。同案では、2巡目で見つかった71例の甲状腺がんについて、通常の地域がん登録から推計される有病率に比べて「数十倍多い」と指摘。1巡目の報告書で採用していた4区分で解析したところ、線量の高いとみられる避難区域、中通り、浜通り、会津の順に甲状腺がんが多かったとしている。

しかし最終的に、この4区分の詳細な検討は行わず、国連科学委員会(UNSCEAR)の推計甲状腺吸収線量を利用し、「線量の増加に応じて発見率が上昇するといった一貫した関係は認められない」と結論づけていた。また解析結果については、線量ごとの解析人数や解析方法を示していない上、結果のグラフに大幅な誤りが見つかるなど、様々な問題が指摘されていた。

甲状腺検査本格検査(検査 2 回目)結果に対する部会まとめ(案)
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336455.pdf

福島県内の委員ら猛反発
これに対し、臨床心理士の成井香苗氏が強く反発。部会で研究デザインを突如、変更したのは理解できないと指摘。福島県内を回って心理職をしている立場として地域4区分は妥当な区分だと実感しているとして、線量が不確かなのは、UNSCEARの推計も変わらないと反論。「なぜ4地区で解析できないのか」と迫った。

成井氏は過去の資料を配布しながら、最初の頃、どれだけ放射線を浴びたかはわかっていないが、5月の時点でもとても高いと説明。星北斗座長が、許可を得ずに配布しては困ると注意を受けると、「ここは譲れない」と切りかえす場面もあった。

また福島大学の富田哲教授も「結論がどうしてこういうことになるのか腑に落ちない。」と「甲状腺癌が数十倍高かった。13市町村、中通り、浜通り、会津の順で高かったとの内容から、ある程度、原発との関係が出そうなもいいのに、一切、言及がない。なぜ「被曝との関係がない」と断定できるのか。」と疑問を呈した。そして、「ある程度、可能性がある以上、それを残すような記述をするのが科学的な態度ではないか、法的な観点で読むとどうしても強引だ」と注文をつけた。

広島・長崎の専門家は絶賛

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[逆に報告書を妥当とする意見もあった。長崎大学の高村昇教授は、新たなデータが出てきたために、デザイン変更するのはやむ得ないと主張。また広島大学の稲葉俊哉委員は「細かなところまで気を配ってあり、素晴らしい報告書」と絶賛した。稲葉委員はさらに、「グラフの横軸が20〜30ミリと分けているが、放射線腫瘍学からすると非常に少ない。研究者が非常に注意して分析した結果、それほど高くないことがわかってきた。この低い中で分けるのはある意味無理やり。もともと線量が低いということを加えるべきではないか」と付け加えた。

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このほか、来春から始まる5巡目の検査に向けて作成している「検査のお知らせ」をめぐっても意見が対立。秋頃までに改めて議論することとなった。

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甲状腺がん悪性・悪性疑いは218人〜事故当時4歳も
会議では検査結果も公表。今年3月までに甲状腺がんの悪性ないし悪性疑いがあると診断された人は、2018年12月末から5人増え218人となった。また、甲状腺摘出手術を受け、がんと確定した人も5人増え、173人になったと報告した。また検討委員会に公表された人数としてはにははじめて、4巡目で、事故当時4歳の子どもが甲状腺がんと診断された。

全文と動画

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