被災者の今、伝える フォトジャーナリスト豊田直巳さん 「福島 『復興』に奪われる村」刊行 via 西日本新聞

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から8年、フォトジャーナリストの豊田直巳さん(62)が福島の今を記録した「フォト・ルポルタージュ 福島 『復興』に奪われる村」(岩波書店)を刊行した。2020年東京五輪へ向けた復興イメージの裏で、被災者の多くが避難指示が解除された後もふるさとに戻らず、再起へ苦悩する現実を記録した。

豊田さんは、劣化ウラン弾問題のイラクや原発事故のチェルノブイリなどの取材を経験。震災直後から福島県に入り、飯舘村などで被災者への取材を重ねる。ドキュメンタリー映像として「遺言 原発さえなければ」(共同監督)、「奪われた村 避難5年目の飯舘村民」などがある。

今作は、岩波ブックレットの福島シリーズ3冊目。行政が復興事業を急ぐ中で生まれる新たな「安全神話」を指摘。出荷再開の見通しが立たない中、田畑を維持するために作物を育てる農家、102歳の義父が避難直前に自死し東電を提訴した被災者など、深く交流してきた飯舘村の人々の真情を伝える。

原子力推進の看板撤去、放射能残土の残る中で開かれる祭り…。43枚の写真がメッセージを放つ。豊田さんは「ふるさとを思って生き、自ら励まし奮闘する“抵抗の文化”が被災地に生まれている」と語る。全96ページ、840円(税別)。

「奪われた村-」の上映会が16日午後2時半から、福岡県粕屋町のサンレイクかすや多目的ホールである。写真展「フクシマの7年間~尊厳の記録と記憶」も午後1~5時に同時開催する。500円(高校生以下無料)。

◆福島の今--豊田直巳さんに聞く

(略)

家族離散と村民分断が再来する。戻る者への支援は手厚いが、戻らない者の支援は縮小する行政は被災者に寄り添うものだろうか。突然、放射能に襲われて避難を命じられ、今、自分たちの願いを聞かれることもなく、戻るか否かと判断を迫られる理不尽さ。憤りと諦めをない交ぜに、村を去る人々もいる。

生きているうちにふるさとが「放射能汚染前」に戻ることはない。
     ◇

あることをないことにする行為が福島で目立つ。双葉町にあった標語看板「原子力明るい未来のエネルギー」が撤去された。「安全神話の過ちを後世に伝える」という町民の保存要望は無視された。放射能汚染を隠すかのように、国は計測用モニタリングポストの多くを順次撤去するという。

「復興の火」と呼ぶ東京五輪の聖火リレーが走りだす福島は、安倍首相が五輪誘致時に語った「アンダー・コントロール(制御下)」を印象づける地でなければならないのだろう。

「復興」の掛け声は時に被災者を圧迫する。「風評被害を招く」という言葉の連呼は放射能の健康被害を語りづらい空気を広げる。事故時、わが子を被ばくさせてしまったかもしれないと見守る親たちの悩みの言葉や訴えを奪う。

全文は被災者の今、伝える フォトジャーナリスト豊田直巳さん 「福島 『復興』に奪われる村」刊行

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