汚染土再利用「最終処分と同じだ」 福島住民に募る不安 via 朝日新聞

福島県内では原発事故の後、除染で大量の汚染土が発生した。国は最終処分量を減らし、「県外搬出しやすくするため」、県内での再利用計画を進める。だがこの計画は、避難者の帰還を妨げ、復興の停滞にもつながりかねない。県民は「そもそも約束違反だ」と不快感を示している。[…]

計画とは、この地区を通る常磐自動車道の拡幅工事で汚染土を盛り土として再利用するというもの。環境省は市内の仮置き場にある汚染土1千立方メートルほどを道路拡幅の基礎に使い、その表面を汚染されていない土で覆うという計画を描く。

 役員会で計画を説明した羽倉行政区長の相良(さがら)繁広さん(67)に、「一度設置されたら汚染土はずっとそのまま置かれてしまう。最終処分と同じだ」「避難指示が解除されたのに若者が不安に思い、帰ってこなくなってしまう」「地震や大雨に見舞われたら、工事に使われた汚染土が流れる可能性がある」などと反対意見が噴出。出席した11人の全員一致で拒否の方針を決めた。相良さんは「安心、安全なふるさとで子どもたちを育てる。そんな環境を整えることが私たちの責務だ」と強調。これまでに約1200人分の署名が集まっているという。

 環境省福島地方環境事務所土壌再生利用推進室の百瀬嘉則室長は「引き続き内容や安全性を説明し、理解を得られるよう努力したい」としている。

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 中間貯蔵施設については、県と双葉、大熊両町が「30年以内の県外最終処分の法制化」を条件に施設を受け入れた経緯があり、最終的には県外に搬出される約束だ。環境省は「量が少なくなれば、最終処分の理解も得やすくなる」(山田浩司参事官補佐)との考えで、汚染土の再利用計画を県内で進めている。

 飯舘(いいたて)村では17年11月、帰還困難区域の長泥地区で汚染土が使われることが決まった。この地区では23年春ごろの避難指示解除に向け、特定復興再生拠点の整備が進められており、その整備計画に村内の除染で出た汚染土の再利用が盛り込まれた。再利用の量は70万立方メートルとも言われるが、量や着工時期は現地調査を経て決まる。ただ、地元では「汚染土の受け入れは拠点整備との交換条件だった」との声も聞かれる。

 住民の反発で頓挫した計画も。17年12月、環境省二本松市内の水田近くにある市道工事で汚染土約500立方メートルを使いたいと提案。しかし、住民団体が約5千人分の署名を集めて反対。環境省は18年6月、計画を事実上撤回した。

 二本松市の市民団体の鈴木久之さん(62)は「水田の隣に埋められるのだからみんな不安だ。ここで始まったら、他でも埋められてしまうという思いで反対運動が広まった」と話す。

栃木と茨城でも実証へ埋め立て

 福島県外でも除染で出た汚染土の問題がくすぶる。岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県では計約33万立方メートルの汚染土が公園や農地などで保管されたままで、最終処分の方法は決まっていない。

 環境省は処分方法として埋め立てが有力と判断し、汚染土を保管している栃木県那須町のグラウンドと、茨城県東海村日本原子力研究開発機構の敷地に汚染土を埋め立て、18年8月から周辺への影響を調べる実証事業を行っている。

 ただ、那須町で問題を追及する田代真人さん(76)は「半年ぐらいで安全性を確認すると言っているが、長期間埋めておくものなのに判断期間が短い。将来にわたって影響を受けるかも知れない住民は不安だ」と話す。(奥村輝、江川慎太郎)

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 〈汚染土〉 原発事故除染で出た土。田畑や庭などの表面をはいだ土や側溝の汚泥、草木、落ち葉なども含まれる。福島県内では昨年9月時点で、10万カ所以上に計約1200万立方メートルが保管されている。放射能濃度は昨年10月末までに中間貯蔵施設に搬入された汚染土でみると、安全が確保できるとされる1キロあたり8千ベクレル以下が82・8%、同8千ベクレル超が17・2%だった。県外7県では昨年3月時点で33万立方メートルが約2万8千カ所に保管されている。

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