森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 ★原発に経済合理性はない via ニコニコニュース

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なぜ、こんなことが起きたのか。実は福島第一原発の事故を受けて、原発の安全基準が世界中で厳しくなった。そのため日立が建設を進めてきた英国原発の事業費が、2兆円から3兆円に膨れ上がったのだ。また、日立が期待した国内他企業からの出資も、予定通り集まる見通しがつかない。

日立の東原敏昭社長は、会見で「開発をこれからも続けるとさらにコストがかかり、民間企業の日立がすべてを負担するのは限界がある」と話した。つまり、原発の採算が取れないと判断したということだ。

実は、この判断の背景には、日立が原発で生み出した電力を英国側に売電するときの価格の問題がある。英国が高い値段で電力を買ってくれるのであれば、採算は取れるはず。しかし、英国政府は後ろ向き。英国が進める洋上風力発電コストが急激に下がっていて、原発のコスト優位性がなくなってきているからだ。

これまで、原発の最大のメリットとして喧伝されてきたのが、低コストだった。ところが、安全対策の強化で、そのコストが急増する。一方で、再生可能エネルギーコストは急減している。

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現に、東芝の米国子会社で進めていた原発建設は、すでに一昨年に経営が行き詰って清算され、三菱重工トルコで進める原発建設も暗礁に乗り上げている。日本の原発輸出は、完全崩壊の状況だ。

そうした中、日立の会長でもある経団連の中西宏明会長は、原発技術を守るため、国内原発の再稼働推進を訴えている。しかし、それは時代錯誤の提案だ。もはや世界が見放した“高コスト”の原発を国内で守る必要はどこにもない。

私は、日立は原子力事業を、廃炉事業に特化すべきだと思う。幸か不幸か、日本には廃炉にできる原発が50基も残っている。それを次々に廃炉にしていくだけでも、数十年は飯が食えるはずだし、今後、世界で廃炉が進んでいくだろうから、廃炉の技術こそ、世界に売れる技術になっていくはず。ただ、日本政府は、いまだに原発を推進しようとしている。それは、国民を原発事故リスクにさらすだけでなく、国内の電力料金の高騰を通じて、日本の国際競争力を脅かす愚策だ。

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