研究申請前に解析結果を公表〜伊達市の被ばくデータ via Our Planet-TV

福島原発事故後、ツイッターによる積極的な発信で名を知られる物理学者で、放射線影響研究所評議員も務める東京大学の早野龍五名誉教授が、倫理委員会の承認を受けないまま、伊達市民の被ばく線量データを解析し、ICRP(国際防護委員会)の会合で発表していたことがわかった。同研究は、毎時0・23マイクロシーベルトという除染目標を緩和する根拠の一つ。政府は、帰還困難区域の避難指示解除にあたり、被ばく防護策の中心に「個人線量」による被ばく管理を据えるが、これも同研究が影響している。同研究をめぐっては、伊達市による不正な情報提供が疑われているが、国の被曝防護政策の転換に根拠を与えている研究で、新たな問題が発覚した格好だ。

研究計画ないまま伊達市住民6万人をデータ解析
早野氏が、伊達市民の解析データを発表したのは2015年9月13日に伊達市で開催された第12回ICRPダイアログだ。、早野氏はガラスバッジによる個人線量測定の時間による変化のグラフを示し、高線量の地域では一定の除染効果がある一方、低線量の地域では除染効果がないとする解析結果を披露した。
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同研究の研究計画書が福島県立医科大学の倫理委員会に提出されたのは同年11月。その後、早野氏と福島医大の宮崎真氏が2016年と17年にわたり、伊達市民6万人の個人線量データをもとにした論文を専門雑誌に投稿している。同研究をめぐっては、 研究でデータが使われることに同意していない市民についても利用していることが明らかになったばかり。

個人線量データの不正提供か〜福島県伊達市(2018年12月6日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2337
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一方、早野氏との共著論文を執筆した主著者の宮崎氏は、「早野先生がどのようなデータを発表されたか当方では把握しておりません」と回答し、コメントを避けた。同研究は、市が通常の手続きを経ずに、研究者にデータを渡していたこともわかっており、個人情報保護違反の可能性があるとして、市は検証委員会を立ち上げる方向で検討している。また伊達市の住民が10日、東京大学に対し、科学研究行動規範調査の申立てを行なった。

【第一論文】
Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): 1. Comparison of individual dose with ambient dose rate monitored by aircraft surveys
http://stacks.iop.org/0952-4746/37/i=1/a=1
【第二論文】
Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): II. Prediction of lifetime additional effective dose and evaluating the effect of decontamination on individual dose
http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/aa6094
【共著者】
宮崎真(福島医大学放射線健康管理学講座)
早野龍五(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻)
【掲載誌】Journal of Radiological Protection【識別番号】Prot. 37 320
【第1論文】黒川眞一(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)による日本語訳
http://www.ourplanet-tv.org/files/miyazakihayanopaper1.pdf
【第2論文】黒川眞一(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)による日本語訳
http://www.ourplanet-tv.org/files/miyazakihayanopaper2.pdf

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