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福島「老舗魚店」に降りかかる「トリチウム水」海洋放出の難題(下)–寺島英弥 via Huffington Post

地元の人々が恐れるのは、「風評払拭が振り出しに戻った」と報じられた5年前の夏の悪夢だ。

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震災前の約8倍に増えたヒラメ

浜通りの魚への需要は全国で高まっている。例えば「春告げ魚」といわれるコウナゴ(小女子)だ。3月に相馬、いわきの沿岸で獲られる小魚で、釜揚げ、つくだ煮にされる。伊勢湾、瀬戸内など他産地で不漁が続き、全国で品薄となっている。

筆者は昨年3月、相馬双葉漁協の試験操業のコウナゴ漁初日を取材したが、水揚げ風景は盛況だった。漁協が「競り入札」を復活させ、その日の水揚げ7トンが競りにかけられた。震災後の初競りとなって仲買業者3社が参加し、1キロ当たり920~3000円と、前年の相対取引よりも高値で取引された。

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(県が調査した昨年1年間の沿岸の平均資源量は、震災前5年間の平均と比べヒラメが約8倍、ナメタガレイが約7倍と大幅に増えた、と『NHK』も9月24日に報じた)

大川さんは自らも海に出て実感をつかむ。「いわき海洋調べ隊 うみラボ」という地元の市民有志の団体がある。政府や東電の発表に頼らず、2013年末から専門家(水族館『アクアマリンふくしま』など)との協働で海の回復や資源の実態を調査し、ありのままに判断できる情報を提供している。関心ある参加者を募り、東京電力福島第1原子力発電所の沖まで船を出し魚釣りをする、という調査でありスタディツアーだ。

大川さんも共鳴し参加してきた。根拠のない風評に揺らがず、釣った魚を通して、売る人も買う人も事実を共有できる。「放射能うんぬんも大事ですが、釣りがすごいです。資源が回復している福島県沖は、魚が豊富。爆釣りできます」と、昨年も4月初めに乗った船の上から調査の模様をブログで紹介した。

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公聴会が開かれた町文化交流センターでは、傍聴者は約100人に上った。公募で参加した県内外の14人のうち、13人が反対や慎重な意見だった。

「福島県漁連の野崎哲会長(64)は『国民的な議論を経ていない現状では強く反対する』と断言。『試験操業で地道に積み上げてきた安心感をないがしろにし、県漁業に致命的な打撃を与える。まさに”築城10年、落城1日”だ』と訴えた」と翌8月31日の河北新報は伝えた。

トリチウム(三重水素)は放射性物質で、溶け込んだ水から分離しにくく、福島第1原発の汚染水処理で稼働する多核種除去設備(ALPS)でも除去できない。東電は当初、浄化水としていたが、実際には半減期12年のトリチウム廃水約92万トンが保管タンクにためられている。

2013年9月、日本原子力学会の福島第1原発事故に関する調査委員会が「自然の濃度まで薄めて放出」する処分案を提起し、政府の原子力規制委員会、経済産業省の幹部らが「放出やむなし」との見解を相次ぎ表明。2016年4月には政府の汚染水処理対策委員会が(1)深い地層に注入(2)海洋放出(3)蒸発(4)水素に変化させ大気放出(5)固化またはゲル化し地下に埋設、との方法を検討し、「海洋放出が最も短期間、低コスト」と試算した。

福島の漁業者らは「新たな風評を生む」と反対し、その実情を2016年10月24日の拙稿「トリチウム水『海洋放出』を危惧する福島の漁業者」で報告した。

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更田豊志委員長が昨年末から今年1月にかけて、いわき市や双葉、大熊両町、飯舘村など浜通りの被災地の首長を訪ね、トリチウム水を「希釈して海に流す以外に選択肢がない」「批判は承知だが、技術的にまっとうで唯一の選択肢」「意思決定の時期が来ている」「いたずらに先送りは許されるとは思っていない」(いずれも当時の『河北新報』より)など持論を訴え、訪問を終えると「海洋放出することに対し、大きな反対は出なかった」(同)と締めくくった。

海洋放出を受け入れさせるための世論づくりだったのかもしれない。だが、国民の判断の物差しとなるべき同委員会の「専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する(中略)もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全(中略)に資する」(同設置法)との本来の役目に照らしてどうだったのか。

8月の公聴会に先立ち、保管されたトリチウム水に、東電からそれまで説明のなかった別の放射性物質、ヨウ素129も基準値超えのレベルで含まれていたことが明らかになり、メディアに報じられた。

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