住民の反対むなしく進む「汚染土」再利用計画、放射能バラまきに待ったなし!? via 週刊女性Prime

 2011年3月11日、東京電力福島第一原発事故が起き、放射能で大地は広範に汚染された。膨大に発生した汚染土は本来、1か所に集めて厳重管理することが欠かせない。

ところが、これを国は持て余し、「最終処分量の低減を図る」という名目で、8000ベクレル/キログラム以下の除染した土壌を、道路や公園、農地などの造成で再利用しようと計画している。さらにはそれを埋め戻す事業も浮上。汚染土を「再生資材」と言い換え、地域住民にすら十分に知らせず再利用するための実証実験がひそかに進められている。

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「俺らが放射能をまいたんじゃない」

「“うん”と言わないとテーブルにつかないと言われた」

そう話すのは、福島県飯舘村長泥地区の行政区長・鴫原良友さん。実証実験について、国は「受け入れありき」だったことを明かす。

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「汚染土をわざわざ持ってきてほしいなんて思うわけない」

と鴫原さんは苦渋の表情を見せる。「俺らが放射能をまいたんじゃない」と、理不尽さに憤るものの、受け入れるしかない、と決めたのは、「そのまま返す」と言われたからだ。

「あの大きくなった柳、どうすんの。俺ら、自分たちできれいになんてできない」

実証実験で、荒地を農地として整備するから受け入れろ、と言われたに等しい。鴫原さんは「何がどうなっていくのか、わからないことが多い」と困惑を隠さない。

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東京ドーム18杯分の汚染土を搬入

原発事故により汚染されたものは、環境省が「除去土壌」(汚染土壌)と「放射性物質汚染廃棄物」(対策地域内廃棄物、指定廃棄物)に分類して処分している。

除去土壌とは、放射性物質により汚染され、除染で集められた土のこと。対策地域内廃棄物とは、避難指示が出ていた原発周辺地域の廃棄物を指す。今年6月末までに約84万トン(除染廃棄物を含む)が処理されている。

また指定廃棄物とは、日常生活の中で排出されるゴミの焼却灰、下水汚泥、稲わらや堆肥などに付着し、汚染された1キログラム当たり8000ベクレル以上の放射性廃棄物のことで、福島県内・県外含め21万トン以上(平成30年6月30日時点)が残る。

除去土壌は、福島県内の除染特別地域(国直轄)以外の県内52市町村で601万立方メートル、福島県外の「除去土壌」は約33万立方メートルある(平成30年3月時点)。中間貯蔵施設の土壌貯蔵施設には、福島県内の汚染土が、環境省の推計で2200万立方メートル搬入される見込みだ。これは東京ドーム18杯分にあたる量だという。

’16年に毎日新聞が報じた、環境省が設置した汚染土の減容・再利用に関する非公開会合の内部資料では、こういった再利用事業は170年の管理が必要だと専門家が指摘している。

前述のとおり、再利用に向けた計画は’16年に報道され、すでに福島県南相馬市小高区で盛り土構造物の実証実験が行われている。その後、同・二本松市では道路の資材に、栃木県那須町、茨城県東海村では埋め戻しの実証実験を行うと報じられた。使用される汚染土は8000ベクレル/キログラム以下。これは本来、廃棄物として処理する基準である。

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『みんなでつくる二本松・市政の会』共同代表の佐藤俊一さんは、仲間とともに、この実証実験に対する警鐘を鳴らしてきた。’18年2月に開催した勉強会には約80人が参加し、NHKでも報道された。

その後、佐藤さんらは環境省に対し、「汚染土は中間貯蔵施設に搬入すると約束していたこと」「汚染土の最終処分地になってしまうこと」「原子炉等規制法で100ベクレル/キログラム以下のもの以外は原発外に持ち出せないのに、8000ベクレル/キログラム以下の土壌が再利用できることになっていること」などの問題を指摘、実験を白紙撤回するよう要請を行った。

4月下旬、ようやく環境省は永田・原セ地区を対象に住民への大規模説明会を開催。質疑の際、驚くべき新事実が明るみに出た。昨年10月、実証実験が予定される原セ才木地区で環境省による説明会が開かれたとき、21世帯中9世帯のみの参加だったにもかかわらず、国は、住民の「合意を得た」としていたのだ。

大規模説明会では、口を出せない雰囲気に押し黙っていた地域の女性たちも、ついに立ち上がる。

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たった1人への説明のみで埋め戻しが進行

一方、再利用ではなく、汚染土を「埋め戻し」する実証実験も進められている。これは、汚染状況重点調査地域に指定された市町村が行った除染により、民家の庭先などにフレコンバッグに詰めて埋められた汚染土を、掘り出して集め、袋から取り出して埋め戻すという計画だ。「何のために除染したのか」と疑問の声が相次いでいる。

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汚染土埋め戻しの実証実験に選ばれた土地は、那須町が所有する廃校になった伊王野地区のグラウンドの一角にある。2月1日、地元紙・下野新聞が実証実験について報じた4日後、伊王野地区の下町行政区と上町行政区に、それを知らせる回覧板が回った。

 周辺住民への説明を回覧板ですませようとする環境省の姿勢は、二本松市と同じだ。

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「(埋め戻されたら)汚染土か、そうではない土か、わからなくなる。どうするの? と思った」(田中さん)

環境省の不誠実な手続きや、安全性に疑問を抱いた田中さんは、町の環境課に問い合わせ、「説明会はないのか」と尋ねた。すると、「該当する土地の周辺住民に伝えたのでやらない」との回答を得る。

しかしその後、「周辺住民」として町が説明した相手は、たった1人だったことが発覚。町の環境課は、その事実を認めたうえで「代表者から役員に聞いてもらい、“回覧板でお知らせしてほしい”という要望をもらった」と、地元の意向であったと主張する。

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また、8月に実証実験が行われている土地へ足を運び、現地を確認した龍谷大学の大島堅一教授は、「除去土壌は放射性廃棄物とし、集中管理するべき。国民の関心が薄いことを背景に考えられないことが進行している。知らないうちに汚染が広がる可能性もある。放射性廃棄物処分に関わる法の整理、長期にわたるトレーサビリティ(汚染物質が追跡可能であること)の確保も必要だ」と語り、汚染拡散のリスクを警告する。

(取材・文/吉田千亜)

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