【ふるさとを返せ 津島原発訴訟】「裁判官に理解して欲しいのは『失われた共同体』」~現地検証のリハーサルvia民の声新聞

原発事故で帰還困難区域に指定された福島県浪江町津島地区の住民たちが国や東電に原状回復と完全賠償を求める「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」の現地検証が9月27、28の両日、実施される。弁護団と原告団は酷暑の中、リハーサルを行っている。ようやく実現する現地検証で、福島地裁郡山支部の佐々木健二裁判長らに津島の現状や住民が奪われたものをしっかりと感じ取ってもらいたいからだ。8月4日に行われたリハーサルに同行した。放射能汚染や土地・家屋の荒廃はもちろん、原発事故によって奪われた地域共同体の大きさが伝わってきた。

【雑草で覆い尽くされた校庭】
8月4日午前9時半すぎ。スクリーニング場となっている「津島活性化センター」に、原告や弁護士約30人が車で集合した。肌に刺さるような陽射しが痛い。センターの窓ガラスには「0・48μSv/h」と書かれた紙が掲示されていた。国道114号から入って来る車両を誘導する係員は、背後で大きな扇風機を回しながら業務にあたっている。この夏は、放射線だけでなく酷暑との闘いも強いられている。[…]

現地検証もここから始まる。説明に要する時間を確認するため、事前に用意した原稿を若手弁護士が本番通りに読み上げる。2005年にオープンした活性化センターは、公民館として書道教室や親子星空観察会などが行われていたほか、お年寄り向けのデイサービスも担っていた。敷地内には直売所「ほのぼの市」も併設されており、野菜だけでなく凍み餅、ジャム、かぼちゃ饅頭などの加工品も販売されていた。アスファルトで舗装された駐車場から少し離れて雑草が生えている場所に移ると、弁護士が町役場から借り受けたシンチレーションサーベイメーター(TCS-172)は2~3μSv/hを示した。
福島県立浪江高等学校津島校に移動。校舎は人や動物の侵入を防ぐために板が張られ、町営グラウンドを借りて使っていた校庭は雑草ばかりで、もはやグラウンドの体をなしていない。「津島ふれあい体育祭」の会場だったが、今の姿からはとても町民たちの世代を超えた笑顔を想像することは難しい。ちなみに、活性化センターも津島校も携帯電話はずっと「圏外」。一時立ち入りの受付時に緊急連絡用の簡易トランシーバーを手渡されたが、町民によると「電波が弱く、場所によっては使い物にならない」という。それもまた、津島の現在の姿だった。
雑草に覆い尽くされているのは、町立津島小学校も同じだった。7年以上、子どもたちの姿も歓声も無い校舎は蜘蛛の巣が張り、校庭の片隅には乗用車が放置されている。着の身着のまま逃げてきた町民でごった返していたあの頃の混乱を象徴するようだ。現在は二本松市内で授業を続けているが、58人いた在校生は、原発避難による町民離散で今や2人。新入生が入学してくる予定も無く、存続の危機に瀕している。

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