外国人実習生 原発労働家族に言えず 「お金のため」来日 via 毎日新聞

東京電力福島第1原発事故から7年が過ぎた。廃炉に携わる現場には、外国人技能実習生たちの姿もある。日本の原発輸入を中止したベトナムから来日した技能実習生たちはどんな思いで働いているのだろうか。2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場建設にも携わった彼らの姿を追った。【関谷俊介】

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3DKに7人

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 彼らは、ほとんどがベトナム国籍の20~30代の若者。技能実習生4人と建設就労者2人で、いずれも東京電力福島第1原発で働いている。3DKのうち、4畳半を都内で建設会社を営む日本人男性の社長が使い、残りの6畳二間を3人ずつでシェアする。

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無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」でインターネットに接続し、「LINE(ライン)」で約4000キロ離れた母国の家族とテレビ電話をするのが一日の楽しみという。だが、機器の接続がうまくいかず、インターネットにアクセスできない状態になることが多いのが悩みだ。

 実習生のうち2人は幼い子供たちを本国に残す父親。実習期間中の最低3年間は、子供の成長を画面を通して見守るしかない。

「一番ひどい現場」

 彼らが福島第1原発で働くようになったのは昨年秋から。東電が発注した焼却施設の建設工事に入るゼネコンの下請け会社のもとで働く。第1原発では増え続ける汚染水を保管するタンクを敷地内に増設するために伐採した木や、事故時に発生したがれきなどの廃棄物が約36万立方メートル残されたままだ。放射性物質に汚染している可能性があるため外部に持ち出せず、燃やせるものは敷地内で焼却し、体積を減らす。そのための施設だ。

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 彼らを雇う日本人の社長にとっても苦い記憶が残る。「クレーンが使えない分、人力でやらないといけない。他社から人手を借りて、その分経費がかかるから、もうけにならない。工期も厳しいうえにそんな状態だったから、1カ月は遅れていたかな。これまでの中で一番ひどい現場だった」。このままでは会社の存続にもかかわりかねない。途中で引き払って、誘いのあった福島第1原発の仕事に行くことに決めた。原発で仕事をするのは社長も初めてだった。

 原発事故当時、6人の外国人は誰も日本にいなかった。世界を揺るがした事故はテレビの中だけの世界だった。

「ホウシャケイ」

 「ホウシャケイ、ホウシャケイ、ホウシャケイ」。原発での仕事について尋ねると、一人が繰り返した。聞き返しても、放射能のことを指すのか、放射線なのか、線量計なのか、はっきりしない。「日本人もたくさん働いている。だから大丈夫と思う」。グエンさんが言葉をつけ加えた。

 東電によると、6人が働く現場は放射線管理区域に入らず、マスクやタイベックスーツ(防護服)は不要。原発敷地内の作業であっても放射線防護教育は行われず、法律上被ばく線量を管理する必要もないという。近くのモニタリングポストの数値はここ数カ月、毎時0.8~0.9マイクロシーベルトで推移している。

 外国人たちは普通の作業着で働いているものの、線量計は身につけていた。だが、自分たちがどのくらい被ばくしているか、その数値は把握していなかった。

 外国人技能実習制度は、途上国の人たちが日本で学んだ技術を母国で生かせるよう「人づくり」に協力する国際貢献が目的とされている。

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台所に立つ外国人たちに視線を向けた社長は「現場でも仕事がよくできると評判で、本当に助かっているよ」と話した。だが、「(実習生として)最初の3年で借金を返して、本当に稼げるようになるのは(建設就労者として働くようになる)4年目からだよな」ともつけ加えた。

 この会社の従業員は彼ら6人と日本人3人。約30年前の会社設立時は20代の日本人だけで20人以上いたが、今では外国人が中心だ。「職人をイチから育てているのはうちみたいな末端の会社。でも今、日本人の若いのを育てるのなんて難しいですよ。うちも何人辞めていったか、数え切れない。春に入っても夏の現場を経験したら、まず辞めちゃうからね。でも外国人は耐えるんだよ。莫大(ばくだい)な借金をして日本に来ているから、3年間は帰れないし、耐えるしかないんだ」。社長は言った。

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 6人とも、原発で働いていることは家族に明かしていない。「秘密。言わないがいいです」「心配する。(家族に)帰れ、言われます」。一人は伏し目がちに「(線量は)低い。だけど、心配。長い時間やると良くないです」とつぶやいた。

 今を耐えて、日本での仕事や生活を案じる親や妻、子どもたちにはスマホの画面を通して笑顔だけを見せたい。彼らの共通する思いだ。

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