「原発の話はうんざりだ」。原発事故後、初の町内成人式に117人。華やかな式典の陰で〝復興〟進まぬ町~馬場町長は入院し欠席 via 民の声新聞

帰還困難区域以外の避難指示が解除された福島県双葉郡浪江町で7日午後、原発事故後初めて、町内での成人式が行われた。新成人183人のうち出席したのは117人で、出席率は6割を超えた。中学2年生に進級する直前の原発事故で避難を余儀なくされた新成人たちはしかし、あの時の原発事故には多くを語らず「苦労もしなかった」と話す。人の往来が無く静まり返った町内で、会場だけが〝同窓会〟の華やかさに包まれた。避難指示の部分解除から間もなく1年。華やかな式典の裏で町としての機能を失った町中心部を歩いた。

【「原発事故」語らぬ新成人】
もう、うんざりだ、という表情だった。
式典終了後、会議室で開かれた懇親会。町の用意したサンドウィッチやから揚げなどをほお張りながら取材に応じた新成人の男性は、吐き捨てるように言った。
「原発?別に意識してねえし。苦労したとも思ってねえし。めんどくせえですよ。正直言っていつまでもそれを言われるのは。『町に戻らないのか』ってよく聞かれるけど、仕事辞められねえし。っていうか金ねえし。だいたいさ、あそこのアパート空いてるけど引っ越す?って言われて引っ越しますか?それと同じでしょ。戻る気もねえし、中通りで新しい生活が始まってるしさ」

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関東の大学に進学した男性は、真新しいスーツ姿で「やっぱりふるさとは良いですね」と笑った。だが一方で、こうも言った。
「大学生になって、原発という言葉を友人たちから聞いた事が無いです。良くも悪くも、みんな忘れちゃったんですね」

「。。。」筆者は今回、町内唯一の宿泊施設「ホテルなみえ」に2泊したが、館内にも周辺にも食事が出来る店舗は無い。徒歩圏内では、国道6号方面に15分ほど歩いた場所にあるローソンで買い物が出来るのみ。24時間営業で無い上に日曜日が定休日のため、車の無い町民は無料のタクシー(事前予約制、住民票がある町民のみ利用可能)で南相馬市原町区のスーパーまで行かなければならない。2017年11月末現在、306世帯440人が町内で暮らしているが、町全体の人口で見るとわずかに2%を超える程度。逆に家屋解体によってさら地が増えていく。片付けなどで一時帰宅した町民のためにと町の意向で再開された「ホテルなみえ」も、国の交付金を利用する形で1泊2000円で泊まれるものの利用者が伸び悩み、今年3月末で営業を終了する予定。
浪江駅近くの自宅に一時帰宅していた男性は、いわき市内で新居を購入したため町には戻らない。
「この通りで家を解体しないのは2軒だけ。復興への道は険しいよね。若い人たちが戻らないもの。でもね、それも無理も無いよね。せめてヨークベニマル(福島県郡山市に本社を置くスーパーマーケット)でもオープンすれば良いけど、買い物も不便だからね」
別の町民は「ある程度の被曝リスクは受け入れないとしょうがないよね。町を復興させるのなら、どこで折り合いをつけるかだよ」と言ったが、原発事故による汚染や被曝リスクを度外視しても、残念ながら町として機能していない。これもまた、華やかな式典の陰に隠れた浪江町の現実だった。

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