「被曝リスク不安視する人々の受け皿に」。日本女医会が「甲状腺ガン患者を孤立させまい」と子ども基金に150万円寄付。連携し「困ったら女性医師へ」via 民の声新聞

福島第一原発の事故後に甲状腺ガンと診断された患者たちや、避難の有無にかかわらずわが子への健康影響を懸念する親たちを孤立させまいと、女性医師たちが立ち上がった。115年の歴史がある公益社団法人「日本女医会」(東京都渋谷区)。6月には「3・11甲状腺がん子ども基金」に150万円を寄付。無料電話相談にも協力するなど、連携を深めつつある。国からの支援もなく、経済的にも精神的にも苦しい甲状腺ガン患者の救済だけでなく、被曝リスクへの不安を抱える人々の受け皿になる事を目指す。奔走する女性医師たちは「困ったら女性医師に相談して」と呼びかける。

【「困っている人へ確実に」】
「150万円寄付したと言っても、わずか15人分(基金の給付額は10万円)ですから」。この3月から日本女医会の会長を務める前田佳子さん(52)=昭和大学病院医師、泌尿器科=は謙遜する。しかし、甲状腺ガン患者や家族へ息の長い支援を目指している「3・11甲状腺がん子ども基金」(以下、子ども基金)にとって寄付はもちろん「女医会との連携が強化された事の意義は大きい」と関係者は口を揃える。
子ども基金代表理事の崎山比早子さん(78)は「日本女医会から多額のご寄付を頂いた事、本当に感謝しております。加えて電話相談にも対応して下さっており、大変心強く感じております」と語る。「甲状腺ガンと診断されたり、手術を受けたりされた患者さんの中には病気や将来についての心配や悩みを抱えていらっしゃる方もあり、親身になって相談に乗って下さるお医者さんがいらっしゃるだけでも安心できるのではないでしょうか」。
きっかけは今年5月、埼玉県さいたま市で開かれた日本女医会の定時総会だった。子ども基金顧問を務める牛山元美さん(60)=神奈川県相模原市、さがみ生協病院内科部長、循環器内科=が、福島県の県民健康調査や小児甲状腺ガンなどについて発表した。元々プログラムには無く、昼休みのわずかな時間を利用しての発表。与えられた時間は3分間だったが、10分間にわたってサポートを呼びかけた。それを熱心に聴いていたのが前田会長だった。午後のプログラムの中でも子ども基金に触れた。牛山さんは「子ども基金を応援、後押しするようなコメントを前田会長からもらえてうれしかった」と振り返る。
「実は、子ども基金の存在をそれまで知らなかったんです」と前田会長。「原発事故以降、なぜ公的に避難させないのかも含めて私にも思う所はありました。ずっと国に騙されている感覚はあった。でも、日々の仕事に追われていると、何かしたいと思ってもアプローチやアクセスの方法が無いんですね。牛山さんの発表を聴き、子ども基金なら困っている人のために確実に使ってもらえると考えました」

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これまで阪神大震災(1995年)や新潟中越沖地震(2007年)など災害復興に携わって来たが、福島第一原発の事故について「こんなに酷い災害は初めてだ」と指摘する。「見えない物(放射性物質)がこんなにも人々の生活の中まで入っていって、それと闘い、やがて社会とも闘わなければならない。経済的に豊かか否かでは無く、避難したくても出来ない人がたくさんいた。逃げるか逃げないかだけでなく、社会的に何を選んで何を捨てるかという事を福島の人々は短時間のうちに考えなければならなかった。そんな災害など今まで無かったですよね」。
子ども基金はこの春、療養費の給付を受けた甲状腺ガンの患者や家族を対象にした電話相談を実施。9月24日には、対象を受給者以外にも広げて無料電話相談会を行った。いずれも青木さんら日本女医会の女性医師が全面協力。子ども基金によると、9月の電話相談には28件の相談が寄せられた。相談内容は手術後の体調に関するものや避難先での甲状腺検査について、子どもだけでなく大人の健康被害を懸念するものまで多岐にわたったという。療養費の給付対象地域は福島県を含む1都15県だが、それ以外の地域からの相談にも応じたという。
「誰にも相談できず鬱々としているような方々をどうやって面で支えるか。まだ始まったばかりだし全国の女性医師に浸透するには確かに時間はかかります。でも、仲間の女性医師が患者さんなどと実際に話したとなると、他人事、遠い存在だった原発事故が身近になるんです。個々の医師は少しは関心はある。でも、福島で起こっている事は自分とは関係ないと考えてしまう。今回、女医会のトップが共感して寄付したわけですから、その効果は大きいですよね。いつか、全国の人々が被曝による健康不安について『女性医師に相談しに行ってみよう』と考えてくれるようになったら最高ですよね」
青木さんはうれしそうに語った。

 

 

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