【ワシントン=共同】日米両政府が沖縄の施政権返還で合意した一九六九年十一月の首脳会談直前、当時の愛知揆一(あいちきいち)外相の意向を受けた外務省幹部がキッシンジャー米大統領補佐官に対し、返還後、非核三原則に背く有事の沖縄への核兵器再持ち込みに「異論はない」と外交ルートで公式に伝えていたことが十三日、機密解除された米公文書で分かった。
佐藤栄作首相は外務省とは別に国際政治学者若泉敬(わかいずみけい)氏を密使に立て独自に交渉、キッシンジャー氏との間で数日前、持ち込みを容認する密約を結ぶことで合意していた。愛知氏と外務省は密約を知らされていなかったが、首脳会談では再持ち込みを認めるかどうかが焦点になると判断。返還交渉の決裂を懸念し、米側の要求に応じる方針を最終段階で伝達する必要に迫られたとみられる。
五月に機密解除されたホワイトハウス作成の会談録を共同通信がカリフォルニア州のニクソン大統領図書館で入手した。非核三原則に縛られないという趣旨の「会談録案」を外務省がひそかに用意したことは知られているがその考えを米側に伝えたことは確認されていなかった。
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ただ、日本の根強い反核感情を考慮すれば公表できないとして、核の扱いを事前協議することを盛り込んだ声明案に同意するよう訴えたが、キッシンジャー氏は両首脳が最終判断すると答えるにとどめた。会談で佐藤氏とニクソン氏は、沖縄の「核抜き本土並み」返還で合意。日本政府は沖縄に核が持ち込まれることはないと説明していた。