【74カ月目の浪江町はいま】山林火災のモニタリング終了へ。「これだけに時間割けぬ」と福島県が今週中にも決定。「負の情報発信避けたい」の思惑も影響か via 民の声新聞

福島県浪江町の帰還困難区域で4月29日に発生した「十万山」の山林火災で、福島県が「大気浮遊じん」などの測定終了に向けて検討を始めた。早ければ今週中にも関連部局が終了時期を提案し、内堀雅雄知事の判断を仰ぐ。県放射線監視室幹部は「数値を注視していく」と話すが、一方で「こればかりに時間を割く事は出来ない」とモニタリング終了が視野に入っている事を認める。放射性物質の二次拡散が懸念される中、モニタリングデータの蓄積は不可欠な仕事。終了を急ぐ背景には「いつまでも〝負の情報〟を発信したくない」との思惑も見え隠れし、福島県の姿勢には批判が高まりそうだ。

【双葉町で過去最大値】
「モニタリングの結果を注視していく」と「いつまでも続けるわけにはいかない」。この矛盾する方針の〝落としどころ〟をどうするか。「山林火災による放射性物質の二次拡散懸念」という〝難題〟を早く終わらせるべく、福島県庁が動き始めた。
「具体的な事は何も決まっていません。今後もモニタリングの結果を注視していきます」。福島県県放射線監視室の担当者は言う。15日夜に発表された測定結果では、空間線量率の数値には大きな動きは見られないものの、ハイボリュームエアサンプラによる「大気浮遊じん(ダスト)の測定結果」は、降雨が無く最大瞬間風速も西の風10.1メートル(浪江町の気象データより)と強かった12日は、双葉町の石熊公民館でこれまでの最大値となる25.47mBq/㎥を計測。浪江町のやすらぎ荘でも、3番目に高い値となった。
浪江町では13日に71.5ミリ、14日も27.5ミリと週末に強い雨が降った。浪江町で一日の降水量が10ミリを超えるのは4月18日以来。町役場の幹部も思わず「連休中に降ってくれれば、もう少し早く鎮火できたのに…」とこぼしたが、雨のせいか14日の測定値は、山林火災後に測定している3カ所で軒並み「ND」(検出下限値以下)となった。

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原発事故と放射性物質の拡散による「風評」の払しょくに力を入れている福島県としては、帰還困難区域での山林火災という〝ネガティブな情報〟をいつまでもホームページ上で発信したくない。地元紙も、行政の想いを忖度しているかのように火災発生当初から「放射性物質の二次拡散は無い」という姿勢で報道を続け、13日の紙面に至っては、県の発表データの単位をわざわざ換算して報道した。県の発表した石熊公民館の「大気浮遊じん(ダスト)の測定結果」は15.55mBq/㎥(放射性セシウム137)だったが、記事や見出しでは0.015Bq/㎥と単位を変えて表現している。例えば20μSvという空間線量も、単位を変えて0.02mSvと表現すると印象が大きく違う。記事には数値を小さく見せて行政を〝アシスト〟しようとする意図が見え隠れする。

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浪江町では今年3月末に帰還困難区域を除いて避難指示が解除されているため、避難指示が解除された区域にこそ測定器を設置するべきだとの指摘もある。「県職員だけでは足りず、外部(民間調査会社)の協力も得ながらモニタリングを続けている状態」と県放射線監視室は説明するが、当初は「何とか人をやりくりして採取時間を長くしたい」とも話していた。しかし実際には、モニタリング体制を充実させるのではなく終わらせる方向に進んでいる。15日朝に開かれた内堀知事の定例会見では、記者クラブから山林火災や放射性物質の二次拡散に関する質問すら出なかった。
高濃度に汚染された山林で火災が起きたらどの程度、放射性物質が二次拡散されるのか。それをていねいに調べる事よりも「マイナスイメージの払しょく」が重視される。モニタリング開始後、初めて高い値が計測された今月9日発表の「第9報」では「ヘリの運行にも支障を来すような西寄りの強い風が終日観測されていることなどにより、測定地点の周辺の土ぼこりや焼却灰の舞い上がりの影響も否定できません」との表現が用いられていたが、その後、一度も使われる事無く〝封印〟。「気象によると思われる変動」とあいまいな表現に変えられている。
行政が守るべきものは何なのか。内堀知事の姿勢も改めて問われる。

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