原発での被爆、2万人追跡 作業員に全国で無料検診 via 日本経済新聞

6年前の東京電力福島第1原子力発電所の事故後、緊急作業に従事した約2万人の健康状態について、広島の被爆者の疫学調査を続けてきた「放射線影響研究所(放影研)」が追跡調査にあたっている。作業員の所在を確認しながら状況を聞き取る地道な調査。関係者は「被曝(ひばく)の長期的な影響を解明することにつながる」と意義を強調する。

追跡調査の「基本台帳」となるのは厚生労働省が作成した作業員のデータベース(DB)。記載された住所に手紙を送付し調査への協力を呼びかけるが、担当者は「避難や転勤などで当時の居住地を離れている人が多く、連絡を取るのも一苦労」と明かす。DB上の住所が一時的に滞在したホテルだったケースもあるという。

調査の目的は作業員の被曝線量を推定し、甲状腺などのがんの罹患(りかん)状況との関係を長期的に研究すること。特異な環境下での心理的影響の解明も目指すという。大阪大、虎の門病院(東京)、日本原子力研究開発機構など全国10の大学や医療・研究機関が協力する。

放射線が人体に及ぼす影響を解き明かし、作業員の健康管理にも役立つ取り組みだが、調査は簡単には進まない。約8千人とは今も連絡が取れず、放影研は対応を検討中だ。

連絡先が判明しても緊急作業に携わった事実を家族に隠しており「東電」「原発」などの文字が記載された封書の送付を嫌がる人もいた。

さらに事故から時間が経過したことによる課題もある。放影研の大久保利晃顧問研究員は「混乱を極めた作業現場で残されたDBの被曝線量記録は慎重に精査しなければならない」と指摘する。事故直後は線量計が行き渡らず、同じ現場の作業員の被曝線量を記入したり、作業を続けるため線量計を鉛で覆ってごまかしたりした可能性も排除できないという。

(略)

47都道府県に散らばっている作業員を一人でも多く対象に加え、健康への影響を継続的に調べるため、放影研は各地の医療機関との連携体制を強化する。これまでに東京都の7施設、福島県の5施設をはじめ全国70カ所で無料の健康診断を実施できる体制を整えた。

健診は2015年1月に始まり、今年1月末までに2562人が受診。3年に1度を目安に受診してもらい、経年による健康状況の変化を確認していくという。受診率向上のため、最寄りの医療機関までの交通費を支給するほか、現在の勤務先の定期健診として代用できるよう企業にも働きかけている。

受診者から採取した血液は放影研の専用設備に入れ、マイナス80度の環境下で半永久的に保存。疫学研究に役立てる。

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