小学3−4年生を対象にした放射線教育の実施レポート via Huffington Post

(抜粋)

一方、校長先生のお話では一般的に学校現場での放射線教育では専門家が持ってきた放射線測定器を使った実習や霧箱などによる放射線の可視化実験などが行われることが多いそうです。

確 かにそれらはある程度科学の基礎知識がある大人向けであれば有効なやり方だとは思いますが、放射線測定器にしろ、霧箱にしろ、一般の人々の生活の場では目 にすることがないものですので私は大人にもこどもにもわかりやすい放射線教育にはもっと別なやり方があるのではないかとずっと思っていました。

南 相馬サイエンスラボは「人々に実験や観察を通して科学の素晴らしさを伝えること」を目的にした任意団体で、私たちは設立からこれまでの2年間で科学や農業 や食育や乗馬などをテーマに40回を超える親子で学ぶ体験教室を実施してきました。そうしたイベントでいつも大切にしているのは身近なものを題材にして科 学の素晴らしさやものごとの仕組みなどを体験を通して学ぶやり方です。

私たちが親子イベントを行う際にそうしたやり方を貫いているのは私が 学生時代に指導教官から「研究者にとって難しいことを専門用語を多用して難しく説明することは簡単だが、難しいことを身の回りにある身近なものを使って出 来るだけ専門用語を使わずに相手にわかりやすく説明することが実は一番難しいのだ」という内容の指導を何度も受けていたことが理由です。

さて、今回の出前授業の対象は小学3−4年生でした。大人でも目に見えない放射線への心配や不安を感じている人がまだ存在している中で、基礎学力がまだ不十分な彼らに対してシーベルトやベクレルといった生活の中でおよそ触れることのない専門用語を使うことは出来ません。

(略)

<放射性物質・放射線・放射能・半減期について>

さて、科学的知識が十分ではないこどもたちに専 門用語を出来るだけ使用しないで放射線教育をどのように行うかは大きな課題ですが、その最も有力な候補は南相馬市に震災以降何度も訪れて人々に対して放射 線教育を行ってくださっている上昌広教授のチームの手法だと私たちは考えていました。上先生のチームが行っている放射線教育とは放射性物質をプロ野球の ピッチャーに例えるやり方でした。以下にそれらの対応一覧を示します。

・ 放射性物質(プロ野球のピッチャー)
・ 放射線(野球ボール)
・ 放射能(ボールを投げる能力)
・ 放射線のエネルギー(球速)
・ 放射線の種類(球種)
・ デッドボール(被曝)
・ 半減期(投球数が100球を超えて疲れてくること)

(略)

さらに光であれば下敷きなどで遮蔽することが可能ですが、放射線の場合は通り抜けてしまうものもあるので注意が必要であることを説明 することで光と放射線の性質の違いなどについても触れました。放射性物質と放射線測定器という「実物」を使うことが難しい教育現場ではこのやり方が最も妥 当なやり方だと私たちは考えています。

(略)

<除染と農業復興への取り組み>

最後に南相馬サイエンスラボが公益財団法人浦上食品・食文化振興財団の支援を受けて行っている親子農業食育教室で実施した除染、野菜苗の定植、野菜の収穫、放射能測定、調理(カレーライス)と試食に関する活動紹介を行いました。

(1)南相馬サイエンスラボの敷地内にある畑の表土を5 cm, 10 cm, 15 cm掘ってそれぞれの土の放射能測定を行った結果、予想通り表面5 cmに全体のほとんど(86%, 1,200 bq/kg)が含まれていることが分かった結果を示し、

(2)表土を取り除き、堆肥などを混ぜてそこに親子で一緒に茄子、胡瓜、トマトなどの夏野菜を定植した様子を示し、

(3)親子で一緒に収穫した夏野菜の放射能測定を行い、どの野菜からも放射性セシウムが検出されなかったこと、それらを使ってカレーライスを作って食べた様子などを示しました。

こ れらの活動は科学的な調査結果をもとに規模は小さくとも表土を除く除染を行い、安全を確認した畑でこどもたちによって植えられた野菜を育て、再びこどもた ちが収穫する喜びを体験するだけではなく、保護者の方にはそうした除染を行うことでまた再び農地を再利用できるようになること、測定によって地元で流通し ている野菜の安全性は確認されていることなどを知ってもらうことが目的でした。

全文は小学3−4年生を対象にした放射線教育の実施レポート

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