【復興の道標・不信の連鎖】除染基準「1ミリ」の誤解 建設的な議論できずvia福島民友

 「何が何でも『1ミリシーベルト以下』『0.23マイクロシーベルト以下』にこだわる風潮ができてしまった」。放射線安全フォーラムの理事を務める放射線の専門家、多田順一郎(65)は、除染の目標を巡り、疑問を投げ掛ける。

 長年、理化学研究所(理研)などで放射線管理の仕事に従事した多田は2011(平成23)年の原発事故発生を受け、とっさに「除染が必要だ」との思いがよぎった。事故直後から県内に入り、除染などの放射線対策にアドバイザーとして関与している。

 多田は専門家として「原発事故前より線量が高くなったのは確かだが、そのことが必ずしも健康に影響があることを意味しない」ということを理解してほしいと、ずっと考えてきたが、県民にうまく伝える方法が見つからない。

 本県復興の前提となる除染は、現在も県内で大規模に進められている。政府は、年間追加被ばく線量を1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)以下に下げることを「長期的な目標」に掲げている。この「年間1ミリシーベルト」から、生活パターンを想定して算出した1時間ごとの空間放射線量の推計値である「毎時0.23マイクロシーベルト」を、各自治体が除染を行うかどうかの基準に据えた。

 放射線医学総合研究所(放医研)によると、原発事故の発生にかかわらず、自然から浴びる放射線による被ばく量は、日本国内で生活する人の平均で年間約2.1ミリシーベルトある。その一方で、政府が示した数値を被ばくについての「安全と危険の境目」と考える誤解が広がった。
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来年3月の避難指示解除を目指している飯舘村。村から避難し、福島市にある仮設住宅の自治会長を務める木幡一郎(79)は、除染で出た汚染土壌などを入れた黒い袋「フレコンバッグ」が、村の至る所で膨大に積み上げられていることを問題視する。「見ているだけで気が滅入(めい)ってしまう。村民が戻る前に、政府には全て片付けてほしい」

 村内の線量については、冷静に受け止めている。「放射線をなくすことはできず、『放射線は少しでも害だ』と言っているだけでは何も進まない。正しく理解することが必要になる」(文中敬称略)

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One Response to 【復興の道標・不信の連鎖】除染基準「1ミリ」の誤解 建設的な議論できずvia福島民友

  1. norma field says:

    「年間1ミリシーベルト」という基準がいわば原子力推進団体の一つであるICRPが一般住民向けに定めた数値であることに全く言及されていないのも不思議ではなかろうか。

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