第5部 財物(35) 伐採、搬出もできず 県指針で新たな損害via 福島民有

「買った山から木を切り出せないんだ。この損失はどうなるのか」。白河市大信の素材生産業・産業廃棄物処理業「ミツヤマグリーンプロジェクト」社長の満山泰次さん(55)は、田村市船引町の森林図をテーブルに広げ、ため息をついた。
 国有林の立木公売で林野庁福島森林管理署と売買契約を結んだのは平成24年12月26日。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から1年9カ月後のことだった。
 放射性物質が付着した樹皮や枝を落として製材すれば、木材から放射性物質が検出されないことは国や県、専門機関の調査で立証されていたため購入した。
 5・80ヘクタールと4・67ヘクタールの二筆で合計1365万円。スギなど約9000本の半分を材木、残り半分を細かく砕いてバイオマス燃料として販売する計画だった。

 山を買って約2年後の26年12月、県は民有林の伐採木を搬出する条件を盛り込んだ指針を県内の木材業者らに通達した。
 伐採予定地の空間放射線量が毎時0.50マイクロシーベルト以下でなければ伐採、搬出を認めないというのが指針の内容だった。0.50マイクロシーベルトを超えた場所では、樹皮の放射性物質濃度が1キロ当たり6400ベクレルを下回った場合に限り、運び出せるとした。
 県が25年度に実施した山林のモニタリング調査で、放射線量が0.50マイクロシーベルト以下の地点では樹皮が指定廃棄物となる8000ベクレルを超えないことが分かった。これが基となり「0.50マイクロシーベルト以下」を指針の柱とした。
 さらに、濃度測定の誤差などを考慮し、0.50マイクロシーベルト超の地点での樹皮の目安を8000ベクレルとせず、2割減の6400ベクレルに引き下げた。

 指針は満山さんの目算を狂わせた。田村市船引町の山林は福島第一原発から直線で約30キロ離れていたが「まさか」と思い、1ヘクタールごとに11地点を無作為に選び、放射線量を計測した。全地点で0.50マイクロシーベルトを上回り、伐採、搬出が認められる目安を超えていた。剥いだ樹皮の放射性物質濃度を測ると、4地点で6400ベクレルを超え、最大1万1000ベクレルが検出された。
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