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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』を読む――原作者による反論本は問題描写に決着を付けたか? via おたぽる

(抜粋)

本書の中心テーマとなる「鼻血描写が根拠のないデタラメかどうか」は、第3章『「鼻血問題」への反論』と第6章『内部被曝と低線量被曝について』で雁屋氏なりの具体的な反論が試みられている。

■“鼻血シーン”掲載後の反響はどうだったか?

“鼻血シーン”掲載後の反響については、第1章『なぜ、私はこの本を書いたのか』に詳しく書かれている。各マスコミやインターネットユーザー、大臣 などから寄せられた多くの声に対し、雁屋氏は「非難とか批判というものではなく、『美味しんぼ』という作品と私という人間を否定する攻撃だったと思いま す」と述懐している。そうした批判の声を雁屋氏は「感情的に、それこそ人々をあおり立てるだけで、鼻血と放射線の関係について、まともな議論をしないから です」と切り捨てる。ただ本書には記されていないが、「スピリッツ」連載にて“鼻血シーン”が炎上した際には、ネット上で雁屋氏に対して「よくぞ真実を 語ってくれた!」と賞賛する声も決して少なくはなかったことを付け加えておきたい。

なお「スピリッツ」の編集部員は“鼻血シーン”掲載号の発売後、殺到する苦情処理に追われて編集作業に支障が生じるようになり、あわや休刊しなけ ればならないところまで追い詰められていたそうだ。業務に支障が出るほど激しいクレームの電話について、本書によると、雁屋氏は「そんな電話をかけてくる のは、普通の人間ではない、どこかの団体か組織に属する人間、プロフェッショナルの人間だろう」と考えていたとのこと。

雁屋氏はそんな状態でマスコミからの取材を受けても悪い結果しか生まないからと沈黙を選び、事態が沈静化した現在になって本書を発表したという。

■“鼻血”の根拠は明確になっているのか?

雁屋氏や取材同行者、そして『美味しんぼ』本編にも登場した井戸川 克隆氏(双葉町の前町長)などは、鼻血や耐え難い疲労感といった症状に見舞われたという。雁屋氏は数々の実験・調査データを引用し、自身の推測もまじえな がら「鼻血が出ている人がいる」ことと「鼻血が出るメカニズム」について語っている。

鼻血が出ている人が多いことは、2012年に福島県双葉町で行なわれた疫学調査をもとに、他県(宮城県・滋賀県)と比べて、双葉町では「体がだる い、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状」が有意に多いことをデータで示した。ほかにチェルノブイリ周辺で実施された調査など も引用しながら原発事故と鼻血(を含む諸症状)の関連性を示唆している。

(略)

しかし本書第4章『福島を歩く』において雁屋氏は『美味しんぼ』110巻を実例に挙げ、「風評被害と戦ってきたのは、私だ」と述べている。

これはたしかに一面の事実を含むものだ。「福島の真実編」の前半パートとなる当該巻(110巻)では、主人公の山岡たちが福島県産というだけで農作物が売れない現状を目の当たりにし、「風評被害を何とかしなくては」という思いが福島取材の重要な指針となっている。

また、本書においては第4章・第5章『福島第1原発を見る』を中心に、雁屋氏の福島県への熱い思いが語られている。取材開始した当初はまだどんな 描写にするか決めておらず、現地で出会った人々から話を聞き、実際に福島第一原発を取材する中で危機感を強めていったという。「捕った魚を出荷できない 『宝の海』」「福島の海をけがし続ける大量の汚染水」「原発に反対したら、危険人物」など――詳細は書かずとも見出し項目名だけで、雁屋氏が現地取材に よって感じた“被災地の苦悩”をある程度推し量ってもらえることと思う。

そうした人々の声を知った上で、雁屋氏は「福島を応援すればそれでいいのか」と語る。『美味しんぼ』原作を執筆するにあたって葛藤は大きく、汚染 された土地や農作物を作中に描くにあたって「私の心は千々に乱れたのです」「とにかく、本当に辛かった」と本書中で何度も心情を吐露している。だが雁屋氏 はそれを描ききった上で、「福島は安全」と喧伝する電力会社・政府・マスコミ・学者たちを痛烈に批判する。最終的に「福島の人たちよ、自分を守るのは自分 だけです。福島から逃げる勇気を持ってください」と本書を締めくくっている。

住み慣れた先祖伝来の土地を離れても、人さえ生きていれば復興はできる。大事なのは「土地としての福島の復興」ではなく、「福島の人たちの復興」 であると雁屋氏は考える。そんな思いが行き過ぎて作中の「福島に住んではいけない」という過激なセリフに至り、その部分だけが一人歩きして大騒動になった ――という経緯が本書を読むとよくわかる。

全文は『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』を読む――原作者による反論本は問題描写に決着を付けたか?

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