原発政策 命と未来を守るには via 東京新聞

 原発政策が明確な争点として浮上した。反対か、推進かというだけではない。3・11の痛恨を経た私たちが、どんな未来を選ぶかが問われている。

 思い出していただきたい。

 二〇一二年十二月の衆院選で、原発政策は争点になっていない。なりえなかったというべきか。

 福島第一原発事故の翌年、日本中どこへ行っても、まだ恐怖は鮮明だった。

 その年の夏に政府が実施した討論型世論調査では、三〇年時点の原発比率について、半数近くがゼロと答えていた。

◆自民党の変化を受けて

 このような世情を背景に、すべての主要な政党が、速やかに原発ゼロをめざすか、原発に依存しない社会づくりを掲げて臨んだ総選挙だったのだ。

 昨年七月の参院選の真っ最中に、福島の事故を踏まえた新たな規制基準が施行になった。すると自民党の公約が変化した。

 「国が責任を持って、安全と判断された原発稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします」と脱・脱原発依存の姿勢を打ち出した。

 そして今回の衆院選。主要政党の原発政策は、おおむね次のように分けられる。

 自民党は、ことし四月に公表した国の新たなエネルギー基本計画を踏襲し、規制委が安全性を認めた原発は、速やかに再稼働するという。原子力技術は維持すべきだとする次世代の党は、自民党に近い立ち位置だ。

 民主党、維新の党、そして公明党も、将来的には原発ゼロ、脱原発依存を掲げている。

 民主党は「三〇年代原発ゼロ」、維新の党は「既設の原発はフェードアウト(消失)」、政権与党の公明党は「四十年運転制限を厳格に適用する」という。

 共産党、生活の党、社民党、そして新党改革は、再稼働そのものに反対の立場をとる。

 いずれにしても、3・11後初めて、原発が争点になった衆院選と言っていい。

◆福島を忘れたように

 やがて三年九カ月、福島はほとんど変わっていない。十二万人もの避難者がいまだ故郷に帰れない。選挙が終われば、避難先で四度目の新年を迎えることになる。

 原発の敷地内では、流れ出る汚染水さえ止められない。溶け落ちた核燃料のありかも定かでない。

 使用済み核燃料の処分場選定は、公募開始から十二年を経た今も白紙と言っていい。

(略)

◆子孫に何を残せるか

 経済性最優先、命や安全安心は二の次のようにも見える再稼働への道順は、本当に正しいといえるのか。

 脱原発か、推進か。再稼働を是とするか、非とするか。二者択一にはとどまらない。

 福島の尊い教訓を礎に、子どもたちに何を残せるか。どんな未来を残すのか。政党や候補者だけでなく、私たち自身の今が問われる選挙なのである。

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