原発ゼロ1年 (上) 議論なき再稼働に危機感 環境エネルギー政策研究所長・飯田哲也さん via 神奈川新聞

(抜粋)

太陽光発電システムも13年の1年間で原発約10基分に当たる約700万キロワット分が設置され、この1年でおよそ倍増した計算だ。飯田さんが続け る。「『日が陰ると発電量が下がる太陽光は当てにならない』と言われるが、日本全国に雲がかかることはないということを考えれば、広範囲に大量に設置する ことで、十分にピークを補う電力になる」

喧伝(けんでん)された電力不足の懸念も、需要量が急増する夏場のごく限られた時 間帯にすぎない。太陽が照りつけ、気温が上がる7~8月の午後1~4時は太陽光発電の能力が最大化される時間帯とも重なっている。今夏(7~8月)の実績 をみても、東電が「やや厳しい」と位置付ける使用率90%を超えた日は8日間で、「厳しい」とする95%を超えることはなかった。

それでも政府、経済界は原発の再稼働への動きをやめない。飯田さんは「冷静な議論がなされていない」と危機感を抱いている一人だ。

国は電力会社に対し、「再稼働か、倒産か」の二者択一を迫り、電力会社は消費者に「再稼働か、電気料金引き上げ」を選べと詰め寄る。経済界は電気料金が上がり利益が目減りするのを恐れ、再稼働しかないと思い込む。

「本来なら、住民避難や損害賠償、技術審査基準、老朽化原発の廃炉計画、核燃料廃棄物の処理など再稼働の前に合意しておかなければならないことが数多くある」

九州電力川内原発(鹿児島県)は原子力規制委員会が規制基準への適合を認め、政府も原子力防災会議を開き、再稼働への手続きが進む。10月にも地元自治体の同意を得て政府が判断を下し、早ければ年明けにも再稼働される見通しだ。

「再稼働一辺倒の議論のまま川内原発が動きだせば、必要な議論が抜け落ちたままそれ以外の原発も動きだす」と危機感を募らせる飯田さんは再稼働を前提に、廃炉まで見据えた一時的な稼働を議論すべきだと提案する。

止まらない再稼働の流れを前にした妥協にも映るが、「放射性物質で汚染され、いまも人が住めない地域があり、19万人が仮設に暮らしている現実がある」。

何より飯田さんはエネルギー政策の転換は避けられない、とみている。

(略)

いいだ・てつなり 1983年京都大大学院工学研究科原子核工学専攻修士課程修了、神戸製鋼入社。電力中央研究所出向を経て32歳のときスウェーデンへ留 学、ルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。2000年環境エネルギー政策研究所を設立。環境省の中央環境審議会、経産相諮問機関の総合資源 エネルギー調査会などの委員を歴任。55歳。

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