足尾鉱毒 原発に警鐘 足かけ40年 記録映画完成 via 東京新聞

 約四十年前に若者有志が足尾鉱毒事件をテーマに製作を始め、資金難から編集段階でお蔵入りとなった映画が先月に完成した。事件で廃村に追い込まれ た谷中(やなか)村(現栃木県栃木市)に焦点を当てた「鉱毒悲歌(こうどくひか)」。当時の惨状を語る肉声など貴重な映像を多く収めた上、原発にも「最大 の公害」と警鐘を鳴らす。 (神田要一)

 一九七〇年代半ば、事件に関心を持った栃木県の公務員や宇都宮大生ら若者約三十人が「谷中村強制破壊を考える会」を結成した。同県出身の作家、故 立松和平さんもメンバーだった。その後、村民が健在なうちに証言を後世に伝えようと、費用を自力で賄いながら映画会社スタッフの協力も得て映画づくりを始 めた。

 当時まだ稼働していた足尾銅山の精錬所から黒煙が上がる光景や、煙害で壊滅した地域を丁寧に撮影した。廃村後に村民の一部が移り住んだ北海道にも 二度足を運び、移住者の複雑な胸の内を聴き取った。事件告発に半生をささげた田中正造に常に寄り添った男性にもインタビューした。

 16ミリフィルムで五年間で約十二時間の映像を撮りためた。八三年には約二時間四十分に編集した。しかし費用が続かず、未完のまま製作断念に追い込まれた。

(略)

映画の締めくくりでは、こんなナレーションが流れる。「人間に対する最大の公害は、核分裂による被害」「国家の安全保障といい、国益のためとして、原子力開発は国家の名の下に行われているのである」

 八三年の編集段階で吹き込まれていた。経緯は不明だが、当時、各地で原発の建設が進んでおり、製作当時の懸念がうかがえる。

 谷さんは「若い人たちに足尾や田中正造のことを理解してもらえれば」と語る。映画のDVD化も検討しているという。

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 作品は二十六日午後三時半と同六時半の二回、宇都宮市下荒針の「ララカフェ」で上映される。入場料五百円。申し込み不要。問い合わせは歩行社=電028(624)0288=へ。

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