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福島をどう描くか:第3回 「はじまりのはる」 端野洋子さん via 毎日新聞

2巻でも震災、原発事故を設定に取り入れ、原木シイタケ農家の長男、研一を主人公に据えた。原発事故の放射性物質でシイタケ栽培が打撃を受け、実家が廃業を余儀なくされる中、「理系で科学好きだが、人の心の機微にうとい男子高校生」(端野さん)の研一が自分たちの世代で故郷を再生させることを誓い、奔走する姿を多くの取材を基に正面から描ききった。作品は雑誌連載時から大きな話題を呼んだ。

 1、2巻とも「身近なもの」が物語の軸になっているという。端野さんは福島県在住であっても震災後の福島を描くことに「覚悟が必要だった」と語る。
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「描いている本人が何もせず、きれい事を描いても何も伝わらない」

 −−純が骨髄バンクの登録を決めるというシーンも描いていますね。自分たちができることをやるという姿勢を感じます。

 ◆「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」(講談社)の竜田(一人)先生が福島で働いたのと同じような気持ちです。「大変だ、大変だ」と言うだけではなく、「じゃあ、あなたは何ができるの」という提案をしたかった。「子供の白血病が増えるかもしれない。心配だ」と言うなら「あなたが骨髄バンクに登録すればいいべや」と。骨髄バンクに登録すれば、白血病患者に移植する道が切り開けるというのは私自身が体験的に知っている事実です。登録者が増えることで、患者が治る可能性は増えます。
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◇「これ以上、寿命でもない人が無駄に死なないなら後は何でもいい」

 −−2巻の冒頭では原木シイタケ農家である主人公・研一の父が原発事故でシイタケ栽培を断念せざるを得なくなり、思い詰める様子が描かれています。

 ◆それぞれのお宅の事情については詳しく申し上げられませんが、あの時期に精神的にいろんなものを抱えて、亡くなった方もいます。見せ方は考えましたが、「みんながくじけずに頑張っている」だけでは状況は伝わらないと思いました。「こんなことを描いて、当事者はどう思うか」という感想も頂きましたが、特に2巻は私自身が経験したか、直接見聞きした話を中心に、シイタケ農家に取材もしています。原木シイタケ自体、家庭で幼少期から酪農以上に身近な存在でもありました。私の家は畑の裏に熊が出てくるような場所にありますし、父は西郷の林の恵みで生計を立ててきました。震災後は汚染された山中で仕事が行き詰まり、東電との損害賠償交渉に参加していました。

 漫画の取材で東電と原木シイタケ農家の賠償交渉にも行きましたが、事故後、まだ初期だったので東電の担当者に対し、農家が怒りをぶちまけるという構図で、かなり緊迫していたことを鮮明に覚えています。

 そんな状況の中、父が震災後、ぽつりと漏らしたのが「こんな状況でも俺が自殺しないのは死ぬ度胸が無いからだ」という言葉でした。
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−−今後の展開が気になります

 ◆福島を舞台にした以上、知り合いが読んでいることがあります。せっかく単行本にするなら、何十年たっても妥当性がある漫画にしようと決めていました。まずは2巻までで自分がこの間、調べたこと、経験したことは出しました。

 今は次に向けて取材をしたり、勉強をやり直したりしている期間ですね。描きたい話はありますが、分からないことも多いのです。シイタケ農家の話もあと3年くらい知見を積み重ねたら、描かないといけないと思うネタはたまっています。できれば成長した研一の姿を描きたいのですが……。

 たぶん、研一はこの調子なら大学でものすごく勉強して、勢いで他の放射性物質による災害があった地域までキノコを調べに突っ走ると思います。こいつを調べに行かせてあげられるかどうかは私次第です。何とか、今後の可能性や方向を少しでも伝えられる作品に仕上げたいと思います。

もっと読む。

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One Response

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  1. yukimiyamotodepaul says

    作者の真摯な態度に心を打たれます。当事者という問題に対しても、同じ福島県民でも南相馬市では自分は「よそ者」である、という気持ちも持ち続け(福島という言葉でくくられがちな現実の重層性を指摘)、「共感」という安易な言葉に流されず、しかも最善を尽くすため、心と体をフル稼働させていらっしゃる態度に頭が下がります。是非読んでみたい作品。



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