鵜飼哲さん(一橋大学)インタビュー 私たちはいまどこにいるのか、どこへ向かうべきなのか 安倍政権・歴史認識・アジアの未来に向けて① via 人民新聞

安倍政権による、戦争国家への根本的な改造が進んでいる。重大な戦争政策を次々と閣議決定し、改憲と集団的自衛権の行使を本気で進めている。また反中国・反朝鮮を最大限煽り、侵略戦争の歴史を賛美する。あまりに動きが早く、問題も大きく、一体どうすればいいのか。

一橋大学の鵜飼哲さんは、国家を超える民衆の論理について長年発言しながら、この間、反弾圧・反レイシズムの社会運動にも積極的に関わっている。私たちが安倍政権の全体像をつかみ、歴史的視点と世界構造の中でどうすれば良いのかを考えるために、話を聞いた。第1回は、「安倍政権の狙いの全体像について」。(園良太)

災害を利用する「ショック・ドクトリン」

また、私たちは東日本大震災の複合災害で社会が受けた打撃の全体と向き合う必要があります。震災や戦争による社会基盤の崩壊を新たなビジネスに利用する「ショック・ドクトリン=惨事便乗型資本主義」が東北の被災地でフル稼働しています。それは今の世界の資本主義を駆動させる根本的なメカニズムです。しかし、民衆運動の側では最初から原発事故に課題が集約されてきたことに不安を覚えてきました。

今回の震災では、津波で2万人を超える人が亡くなり、生産のインフラが完全に破壊され、町が丸ごとなくなっています。とりわけ被災地の生産者、漁民・農民の不安と向き合うことは、原発の収束労働に動員されている労働者の過酷な状況に向き合うことと同様に大事なことではないでしょうか。この点は、反TPPの闘いにも具体的につながります。

東京オリンピック招致のために、IOC総会で安倍は、福島の汚染水は「完全にブロックされている」と大嘘をつきました。オリンピックに向けた東京の再開発で復興が進んでいない東北や北関東の被災地から労働力を奪うことになるのに、それを「復興五輪」と称しています。このような、二重三重にでたらめなコンセプトには改善の余地はなく、返上だけが正しい選択です。

米軍・自衛隊 被災地を軍事化に利用

震災直後から警察、自衛隊、米軍、韓国軍に加え、イスラエル国防軍の医療班までが、被災地支援に参加しています。前年のハイチの地震とも比較できるような、震災を軍隊の積極活用に利用する国際的支援が、今回は最初から徹底的に行われました。米軍の側では、直前に「沖縄の人々は怠惰だ」などと差別発言したことで批判を受けていたケビン・メアが元締めになって「トモダチ作戦」が展開されました。また現在福島にはフランスの原発ロビーが体系的に介入していて、日本の原発ロビーと緊密な共犯関係が作られています。

教育統制で現実を隠し、オリンピックに民衆を巻き込むという戦略

こうした巨大災害とそれに続く事態は、日本のような自然災害が多い国では国家の原像でもあります。民衆が災害時に頼らざるを得ない存在として「国家」が喧伝され、一方で国家への依存心が強くなっています。しかし他方では、震災翌日の原発事故によって国家に対する信頼は一気に崩れました。この2つの矛盾した過程が衝突しているのが、現在の状況です。

教育を統制して外側の現実を見えなくさせることと、2020年オリンピックのような「ショック・ドクトリン」に民衆を巻き込んでいくことが、「安倍的なもの」が系統的に追求している政策の核心にあると思います。

反原発運動はもちろん非常に重要ですが、そこだけに視野が限定されると、先日の東京都知事選のように、原発再稼働を阻止するには保守層にウイングを伸ばさなければという発想から、倒錯的な政治判断が導き出されます。

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