政府新指針 放射能検査縮小へ 「食の安心」なぜ奪う (東京新聞)via 日々淡々

福島第一原発事故の前と後で、最も変わった日常が食品選びだ。新鮮かどうかより、汚染がないかで判断しなければならない。支えになる食品の放射性セシウム検査の規模が、都県によっては縮小される可能性が出てきた。国が重点検査対象の品目を大幅に削減したためだ。消費者には不安と困惑が広がっている。 (中山洋子)

 「事故からまだ二年なのに、なぜ検査品目を減らすのか」
 三月中旬に発表された政府の検査指針に、茨城県つくば市で市民放射能測定所を運営する藤田康元さん(46)は驚く。

 政府の検査指針は、二〇一二年度で、基準値の一キロ当たり一〇〇ベクレルの半分の五〇ベクレルを超える値が検出されたことのある、およそ百三十品目を重点対象としてきた。この指針に基づき、東日本を中心とした十七都県で検査を実施している。それが、新指針では、重点品目が九十八品目に減らされた。

 新指針では、昨年四月以降に五〇ベクレルを超えたケースがない品目は、重点品目からは外されるからだ。
 例えば一一年度には一〇〇ベクレルを超えていたカブや、五〇ベクレルを超えていたジャガイモやサツマイモなどは、昨年四月以降は五〇ベクレルを超えた例がないため「対象外」になった。
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風評被害を心配する生産者の一部からも、検査態勢の縮小を歓迎しない声が上がる。
 藤田さんと市民放射能測定所を運営する有機栽培農家の松岡尚孝さん(57)も「放射性物質の落ち方は均一ではなくてまだら。畑の位置によってさえ違う。まだまだ分からないことの方が多いのに」と困惑する。

 福島老朽原発を考える会の青木一政事務局長は「本来は規制の網を細かくして、詳細に調べるべきだ。国の指針は逆行している」と批判する。

 安倍晋三首相が施政方針演説で、風評被害防止を掲げたこととも無縁ではないとみる。
 「生産者に余計な検査はしなくてよいという無言の圧力を加えているような指針。だが、風評被害を防ぐには、きめ細かい検査とデータの開示は欠かせない。検査態勢の縮小こそが、風評被害を助長する」

<デスクメモ> 福島のお年寄りが、「自分は食べても孫には食べさせたくない」と話していた。それが、自然な感情だろう。首相が号令をかけたところで、こんな手法では風評被害は簡単にはなくならない。地道に時間をかけて、安全を証明していくしかない。原発事故はあらゆる意味で「収束」していないのだ。 (国)

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