『フタバから遠く離れて』舩橋淳監督インタビュー
(中略)
――原発や放射能問題に対しては、以前から関心があったんですか?舩橋淳監督(以下、舩橋) 原発はよくないだろうとは思っていましたが、その程度でした。僕はアメリカに10年 住んでいたんですが、アメリカでは電力自由化が進んでいて、手軽に自分が使う電気の種類を選ぶことができた。ところが帰国してみると、東京には東京電力し かなかった。チョイスも何もないから、勝手に電気が来るもんだと思ってしまっていたんです。それが原発事故が起こって初めて、その電力の一部が福島第一原 発から来ているということを認識しました。恥ずかしながら、そこで作られた電気が100%関東圏に来ているということも知らなかったんです。
――舩橋監督のお父様は広島出身で、幼いころに原爆被害に遭われたそうですね。
舩橋 はい。僕は被爆2世なんですが、日本映画史でも原爆についてのドキュメンタリーはたくさん作られていたか ら、自分がそういう作品を作るつもりはずっとなかった。もうやり尽くされていて、自分にできることはないと思っていたんです。ところが、テレビで原発事故 の報道を見ているうちに、「被ばく」ということに関して、原爆も原発も同じだと気づいたんです。それなのに、原発はあたかもクリーンであるかのようなイ メージが作られていて、その存在を疑問視する声はありませんでした。それに矛盾を感じたんです。臭いものにフタをするかのように、見えないようにしてきた という歴史が少しずつわかるようになって気づいたのは、原発とは原爆なんじゃないかということ。原爆と同じことが現代に起こっているのだから、何かしらこ の状況に対する映画が作られるべきなのではないかと感じ始めたんです。
(中略)
――撮影を進めるうちに、どんなことが見えてきましたか?
舩橋 加須と東京を行き来するということは、電気の生産者と消費者の間を行き来することでもあるんですが、地理 的に距離が離れていることで、うまくリスクを分散させる不公平な日本のシステムというものが見えてきましたね。地方は地方で都合のいいように、東京は東京 で都合のいいようなシステムが組まれてきたんです。地方には雇用や交付金などのお金が落ちてきます。これまで、双葉では農閑期である冬は出稼ぎに行かなけ ればならなかったのですが、原発ができたことによって自分の町で生活できるようになりました。一方、東京では、地理的に距離があるので原子力のリスクを考 えないで済む。節電したほうがいいのか、と感じなくて済むくらい、たくさん電気を使えるんです。こうやって双方を往復すると、原発のリスクは不均等に分散 し、一部の人に犠牲を押しつけるシステムとなっていることが見えてきました。
――そのシステムに組み込まれてしまった双葉の避難民に触れる中で、印象に残っている言葉はありますか?
舩橋 「これまでは、東電におんぶにだっこで生きていた」と言う避難者がいました。かつて、双葉は「福島のチ ベット」と言われているくらい、過疎がひどく、貧乏な地域だったんです。東電がなければ、双葉町は存在できなかったかもしれない。今まで30年間お世話に なって、東電には仕事もおカネももらってきたのだから、「ありがとう」と言うべきなんじゃないかと語る避難者がいました。
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東電が原発を福島や地方の過疎地に作ったのは、雇用を確保するため、電力を確保するためで、善意でやっていたわけではないので、お礼を言う必要は全くないと思うけれど、「原発マネー」に頼らざるを得なかった地域の仕組みというものは、脱原発を目指すならばしっかり考えなければいけない課題であることをまた教えられる記事。